「下世話」が「王道」を超えてしまう“強烈な違和感” 本当の正論はどこにあるのか?

最近つくづく思うのですが、下世話が王道を上回ってないだろうか? こんなんでいいのかと思う。
下世話の象徴=週刊誌によるツッコミ
例をあげていきます。
まず週刊誌。下世話さの象徴です。これに対しての王道は新聞やテレビが浮かびます。
私は、週刊誌は猟犬だと思っている。獲物をとってくるけど、猟犬自身には「良い獲物」も「悪い獲物」もない。社会派ネタだろうが芸能人の不倫だろうが目の前にあれば獲る。スキャンダリズムが大事。なのでやたら過大評価するものでもない。
このところ「週刊文春」という猟犬は、“東京五輪の開閉会式の演出”を口にくわえてどんどん獲ってきてます。下世話です。
これに対して五輪組織委員会は「掲載誌回収」「文春オンライン記事の削除」を求めた。すると文春は「税金が投入されている公共性の高い組織のあり方として、異常なもの」と指摘。返り討ちでその闇体質をツッコんでいた。
回収要求なんてしたら逆に喜ぶに決まってる
しかも回収要求を出された次号では組織委の「内部告発5連発」をデカデカと載せた。その見出しには、
「回収要求された小誌だから書ける」
あーあ。
五輪組織委は文春にエサを与えてしまった。回収要求なんてしたら逆に喜ぶに決まってる。「向こうから飛び込んできたぞー、お前も焼いてやろうか」という山賊の宴会みたいだ。言わんこっちゃない。聖火がますます炎上している。
ただ、ここ数週の記事を読むと演出プランをただ暴露しているのではなく、開会式の演出チームがいつのまにか「乗っ取られていた」ことを追及していた。つまり莫大な税金を使うイベントの公益性を問う内容だった。
ゲンダイ師匠が真面目に見えてしまう「今」って大丈夫か
皮肉な展開である。この本質を新聞もテレビも見て見ぬふりするから、下世話が王道を超えてしまっている。スキャンダリズムがいつの間にか東京五輪の不透明な体質を問う役割を担っている。いいのか他のメディアはそれで。
では次の「下世話が王道を超えている」例を挙げる。それはタブロイド紙。これも相当下世話です。
ところが4月7日付の「日刊ゲンダイ」の1面を見て驚いた。
『池江の復活と五輪開催可否は別問題』
びっくりした。タブロイド紙といえば意地悪でひねくれた高カロリーな記事が楽しみなのですが、これは冷静な指摘。
『安直な商業主義に利用された選手の方こそいい迷惑』
いや本当に。選手には素晴らしい運営でこそやってほしい。ゲンダイ師匠が真面目に見えてしまう「今」って大丈夫か。
ちなみにこの記事では安倍前首相の「ここまで重ねてこられた努力は本当に並大抵のものではなかったと思います」という池江璃花子選手へのツイートを引用し、
《「桜を見る会」前夜祭の問題だけで118回も虚偽答弁をするのも並大抵のことではないが、》
と「並大抵」について皮肉をかましていた。ああ、安心した、意地悪なゲンダイ師匠がここにいた。
「首相出して」ワクチンを巡るファイザーとの交渉
同じタブロイド紙の「夕刊フジ」も王道(一般紙)より興味深いコラムを掲載していた。
『コロナ対策で菅首相、結果出せず ワクチン遅れと病床の逼迫』(4月7日付 風雲永田町)
ベテラン記者たちのコメントを載せている。
「ファイザー側が、交渉相手をめぐり『河野太郎ワクチン担当相とでは、格が低い。菅首相とであれば交渉する』と言った、との情報があるようだ。それならば、菅首相はなりふり構わず交渉すべきだったのではないか」
この記事は私も読んだ。共同通信のこれ。
『「首相出して」難交渉』『主導権はファイザー 河野氏相手にされず』(信濃毎日新聞3月7日)
もちろんファイザー製薬の駆け引きの一つだろう。でも本当にこういう事態になったら国内なら力ずくで乗り切れても海外のリーダーや交渉人は菅首相に忖度などしてくれない。菅首相の発信力、対話力は政権ではなく国民の命運を握っているという当たり前のことを考えさせた怖い話であった。
では菅首相はどうすべきなのか。「夕刊フジ」コラムは最後に書いていた。
「情報をきちんと開示することだ」
下世話なタブロイド紙が真面目に見えてしまう。
正論すぎる北朝鮮の“建前”「コロナから選手を守る」
では、下世話だけど正論すぎた最強の件を紹介しよう。
北朝鮮である。
『北、東京五輪不参加を決定』(産経新聞4月7日)
政治的な思惑ではという解説が目立った。
米バイデン政権が新しい対北朝鮮政策をまもなく公表するタイミングでの不参加表明は「今は融和ムードを演出する局面ではないとの判断も見え隠れする」(朝日新聞4月7日)
狡猾な北朝鮮。日米韓への政治的駆け引き説はおそらく当たっているだろう。本音と建前でいえば「本音」の部分だ。しかし今回の北朝鮮の「建前」はなんだったか。
『コロナから選手を守る』(産経・同)
ああ、正論すぎて困る。
見え見えの正論であるのがわかるのに、なんとも痛いとこを突かれた感がある。東京五輪はどでかい矛盾を抱えているのがわかる。
この、下世話だけど正論すぎという現象はいつまで続くのだろうか。
文春もタブロイド紙も北朝鮮も、ゲリラが王道を制している。
(プチ鹿島)