新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種について、さいたま市は19日、すでに689人への接種を終えたと発表した。だが、政府が同日に発表した接種回数状況(18日時点)では「0回」となっているほか、埼玉県が把握している同市の接種済みの人数(19日午前時点)も「338人」と、食い違いが生じている。国のシステムへの登録作業で意思統一が図られず、入力の漏れや遅れが生じたことが主な原因とみられる。
県によると、高齢者向け接種は19日までに、さいたま、川口、戸田、寄居の4市町で始まっている。
県内で最も早い、12日に始まったさいたま市では、市内の特別養護老人ホーム15施設の入所者を対象に、16日までの5日間で、計689人に1回目の接種を終えたと発表した。
政府は接種を行った医療機関や自治体に対し、政府が用意したシステムへの入力を求めている。現在国内で接種されているワクチンは2回の接種が必要で、1回目から2回目まで3週間空ける。同じ人に確実に2回の接種を完了させるため、システムで把握することが欠かせない。
ただ、システムは、内閣官房の「VRS(ワクチン接種記録システム)」、厚生労働省が運営する「V―SYS(ブイシス)」と二つあり、自治体や医療関係者に混乱が生じている。
VRSは、専用タブレットで接種券に記載された18ケタの数字を読み込み、接種対象者の名前や日時、場所などを記録する。19日に政府が発表した接種回数状況はVRSに基づくものだが、県内で「0回」となっている原因について、県担当者は「必ず入力するよう、自治体側に周知し切れていなかった」と説明する。
一方、ブイシスについては、対象者の人数と属性(医療従事者か高齢者かなど)を入力する。県が把握するさいたま市の接種済みの人数「338人」は、ブイシスに基づくものだが、市の担当者は「接種に携わった医療関係者が入力をしていないケースがあった」とみている。
これに対し、さいたま市が発表した接種済みの人数「689人」は、システムに関係なく、各施設からの聞き取りをもとに集計したため、それぞれ異なる数値となってしまった。
県は、これから高齢者向け接種を始める市町村も含め、それぞれのシステムへの入力の徹底を求めるとしている。