65歳以上の高齢者を対象とした新型コロナウイルスワクチンの接種が各地で始まったが、予約の申し込みが殺到するなど、混乱が生じた自治体も少なくない。電話がつながらず住民が役所を訪れる事態も。高齢者以外の一般住民向け接種開始が見込まれる夏以降を見据え、自治体では電話回線を増やしたり、サーバーダウンを防ぐシステム強化をしたりするなど、予約方法の対応に追われている。
「インターネットの使い方が分からないので同居の息子が全部やってくれた。先着順で当たったのはありがたい」
今月12日、ワクチン接種のため東京都八王子市役所を訪れた70代の女性はこう話した。同市では5日に先着順で予約を受け付けた結果、1900回分の予約枠は1時間半で埋まり、コールセンターには約8万回もの電話が寄せられた。
接種予約には、電話とネットを併用する自治体がほとんどだが、予約できた人はネット経由が多いとみられる。一方で、ネットの使い方が分からない高齢者も多く、電話が殺到したり、市役所に訪れたりする事態にもなっている。
19日に先着順での予約を行った宮崎県都城市。電話とネットのほか、無料通話アプリ「LINE」を活用した接種予約システムでも受け付けたが、いずれも混み合ってなかなかつながらず、市民約150人が市役所に訪れた。
名古屋市も21日、高齢者向け集団接種で予約専用電話に問い合わせが殺到し、「パンク状態」になっていると明らかにした。予約のウェブサイトもアクセスしにくい状況が断続的に発生し、市は、時間を空けて予約してほしいと呼びかけた。
×××
LINEを活用したワクチン接種予約システムをめぐっては、利便性が高く、全国約200の自治体が導入を予定していたが、利用者の個人情報が中国の関連会社で閲覧可能な状態になっていた問題を受けて、利用を見合わせる自治体も出ている。
神奈川県寒川町では今月、同町のLINEのアカウントを開設し、ワクチン接種予約システムも導入する予定だったが、問題を受けて延期した。担当者は「安全性が確認されるまではネットと電話で予約を行う」と話す。
このほか、静岡県伊東市や甲府市もLINEの導入を見送った。ただ、高齢者以外の一般住民の予約が始まると、さらに申し込みが殺到することは必至で、スムーズに運用するためにも「LINEの活用を再検討しないといけない」(甲府市の担当者)とする声も出ている。
×××
こうした事態を受けて自治体は予約方法の見直しなど対応に乗り出している。
福島県郡山市は1日に予約受付を行い、電話が殺到したため、次回の予約からコールセンターの電話を20回線から50回線に増やす。予約が埋まった場合には、すぐに自動音声案内を切り替えるようシステムを変更するという。
事前に電話とネットで希望者を募った上で、抽選で接種予約を実施した愛知県春日井市では、予約の倍率が約44倍となった。混乱を避けるため、次回以降はかかりつけ医や身近な医療機関から住民に案内し、ワクチン接種を進めていく予定だ。