「蛇の生殺し」「全面協力、何だったのか」 酒類提供自粛にため息

埼玉県は24日、新型コロナウイルス対策本部会議を開き、「まん延防止等重点措置」の適用区域に川越、所沢、草加、越谷など12市1町を追加することを決めた。区域内の飲食店に対しては、営業時間を午後8時までに短縮するよう要請するほか、既に対象となっているさいたま、川口両市を含めて終日、酒類提供を自粛するよう要請する。期間は28日から5月11日まで。大野元裕知事は「ゴールデンウイーク(GW)が正念場。GW後に感染爆発を生む休日にしてはいけない」と理解を求めた。【鷲頭彰子、岡礼子】
「GWは自宅で」大都市への往来自粛
対象区域を選んだ理由について、大野知事は「東京に隣接し、鉄道路線などを勘案した」と説明した。
対象区域の飲食店には終日、酒類提供を控えるよう要請。対象区域外でも、28日以降の措置期間中は「一人飲み」や同居家族のみのグループを除き、酒類提供を終日自粛するよう求める。
県民に対しては、東京や大阪など緊急事態宣言発令地域との往来を控えるよう強く要請するほか、「路上飲み」やカラオケ利用の自粛も求める。県内の事業者に対しては、出勤者数7割削減を目標としたテレワークの徹底と、東京への出勤者数減に努めることなどを求める。
百貨店など大規模集客施設には、GW期間中のバーゲンセール・催事の延期や、入場制限強化を依頼する。
県内の新規感染者数は20日から5日連続で200人を超えており、23日現在の入院者数は504人で、全病床に占める使用率は33・6%。国の指標では「ステージ3(感染急増)」に相当する。感染者1人が平均何人に感染させるかを示す実効再生産数は1・224と、感染拡大の目安となる1を超える状態が続いている。
大野知事は会議後の記者会見で「短期間を想定して出された(東京都などへの)緊急事態宣言の間で感染を封じ込めることが必要。GWは自宅で過ごしていただきたい」と県民に呼びかけた。
「全面協力、何だった」
「この1年間、国や県の感染防止策に全面的に協力してきたが、何だったのか。がっくりしている」。スナックや居酒屋など約230軒が加入する埼玉県社交飲食業生活衛生同業組合の西谷真也理事長は、酒類提供の自粛要請に、ため息をついた。
県の発表によると、重点措置が適用される市町の飲食店では28日~5月11日、午後8時までの営業時間短縮と、酒類提供の終日自粛が要請される。「『午後8時まで営業していいが、酒は出すな』というのは中途半端。酒がメインの店には『蛇の生殺し』みたいなものだ」
組合では2020年春以降、感染防止ガイドライン策定や時短、加入店への仕切り板やCO2(二酸化炭素)センサーの設置などに取り組んできた。西谷さんは「組合としては『自粛』にも協力するが、私の店は休業せざるを得ない。無力感しかない」と話した。【坂本高志】
県の発表骨子
・「まん延防止等重点措置」適用区域に28日から川越、所沢、草加、越谷、蕨、戸田、朝霞、志木、和光、新座、富士見、ふじみ野各市と三芳町を追加。期間はさいたま、川口両市と同様に5月11日まで
・適用区域の飲食店には28日以降、酒類提供を終日自粛するよう要請。営業時間は午後8時まで
・適用区域外の飲食店に対しても28日以降、「一人飲み」と同居家族グループを除き酒類提供の終日自粛を求める
・適用区域のイベント会場、劇場、映画館には、営業時間を午後8時までとし、酒類提供を終日自粛するようお願い
・全県の事業者に対して出勤者数7割減を目標にテレワークを徹底し、東京など緊急事態宣言地域への出勤者減に努めるようお願い
・全県の大規模小売店や商業施設に対して、ゴールデンウイーク中の催し物の延期・自粛をお願い