政府は27日の閣議で、慰安婦問題について、「従軍慰安婦」との表現は適切でなく、単に「慰安婦」という用語を用いるのが適切だとする答弁書を決定した。先の大戦中に行われた朝鮮半島から日本本土への労働者動員について「強制連行」との表現が不適切だとする答弁書も決めた。今年4月から使われる中学校歴史教科書に「従軍慰安婦」との記述が復活して問題視されたが、文科省は政府方針を徹底する必要がありそうだ。
注目の答弁書は、日本維新の会の馬場伸幸衆院議員の質問主意書に答えたもの。
まず、1993年の河野洋平官房長官談話(河野談話)で用いられた「いわゆる従軍慰安婦」との表現について、「当時は広く社会一般に用いられている状況にあった」と説明した。
ただ、その後に、朝日新聞が2014年、虚偽の強制連行証言に基づく報道を取り消した経緯(=慰安婦大誤報)を指摘したうえで、「『従軍慰安婦』という用語を用いることは誤解を招く恐れがある」とし、「単に『慰安婦』という用語を用いることが適切だ」と明記した。
今回の閣議決定を受け、産経新聞と読売新聞は28日朝刊で報じた。ただ、朝日新聞の同日朝刊(東京版)には記事が見当たらなかった。
歴史的に重要な閣議決定をどう見るか。
自民党の山田宏参院議員は「河野談話は政府答弁ではないが、これまでも継承されてきた。これを覆すには、政府の統一見解を再度出すか、閣議決定によって『従軍慰安婦』という文言自体を不適切とする必要があった。今回の閣議決定で『従軍慰安婦』という用語にピリオドを打った。今後は公式文書や教科書では絶対に使えない言葉となった」と評価した。
新しい歴史教科書をつくる会副会長で、教育研究者の藤岡信勝氏は「今回の閣議決定を受け、文科省は教科書の出版社に対して訂正勧告を出すべきだ。出版社は修正版を再配布することが求められ、現場の教員も生徒への事情説明が必要だ」と語っている。