新型コロナウイルスの緊急事態宣言の発令で大阪など4都府県では酒を提供する飲食店が休業するなか、繁華街では複数の人が屋外で飲酒する「路上飲み」が目立っている。しかし、屋外でもマスクを外して大声を出すと、感染源の飛沫(ひまつ)を浴びせてしまうことが理化学研究所などの分析で分かった。専門家は「路上飲みは、リスクが高い」と警鐘を鳴らす。
26日午後8時ごろ。大阪市西区の靱(うつぼ)公園では会社員らのグループが10組近く集まり、缶ビールや酎ハイを片手に談笑していた。小さなテーブルや折りたたみ椅子を持ち込む人もいる。近くの会社に勤める男性(47)は、同僚2人とコンビニエンスストアで酒を買い込んで訪れた。3時間近く飲むという。「オンラインより、やはり直接会う方が楽しい。外なら換気が良いし、感染対策にもなる」と話した。
同市北区の繁華街でも、若者らのグループ3組ほどが路上で酒を飲んでいた。みんなマスクは着けていない。男性会社員(24)は行く予定だったラーメン店が休業していたといい、「店が開いていないので、仕方ない。コロナ禍は収まってほしいが、メディアが騒ぎすぎているのでは」と語った。
市民の間で「外なら大丈夫」という見方は多いが、屋外でもマスクを外して話せば感染リスクがある。理研などの研究チームはスーパーコンピューター「富岳」を使い、屋外でテーブルを囲んで飲食しながら大声で30秒間話している状況を再現した。
すると、風のない状態では、吐き出した飛沫の1割が1メートル先にいる正面の人に到達し、その両隣の人にもかかった。風が吹くと飛沫は拡散し、風向きが頻繁に変わる状態を踏まえると、テーブルを囲む全ての人に到達した。一方で、マスクを着けていると、飛沫は1メートル先まで届かなかったという。理研チームリーダーで神戸大教授の坪倉誠さんは「屋内外を問わず、マスクなどの対策を取れば、飛沫量を相当抑え、周りの人へのリスクをかなり減らすことができる」としている。
東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に対する緊急事態宣言の発令に伴い、酒類を提供する飲食店は休業を求められている。このため、スーパーやコンビニで酒やつまみを購入し「路上飲み」をする人が増える恐れがある。
感染症に詳しい富山県衛生研究所の大石和徳所長は「まん延防止等重点措置でも感染拡大は止まらなかっただけに、これまで以上の強い対策を取る必要がある」とした上で、「新型コロナは、症状の出ない人がいる。市中感染が広がっている現状を踏まえると、感染者は身近にいると考えた方がいい。屋外でもマスクを外し近い距離で話すのは感染リスクが高い。楽観せずに路上飲みはやめてほしい」と呼び掛けている。【郡悠介、清水晃平、中川友希、小鍜冶孝志】