収容先の名古屋出入国在留管理局(名古屋市)で3月に亡くなったスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)の妹らが17日、同入管の佐野豪俊局長と面会した。合わせて死亡時の居室を視察したが、強く求めていた室内のビデオ映像は「保安上の理由」として入管側が公開しなかった。妹らは「十分な説明がなされず、不安と怒りを感じた」と憤った。
遺族側の要望で実現し、妹ワユミさん(28)とポールニマさん(26)、弁護士ら計10人が面会した。
面会後、市内で記者会見した妹らによると、体調不良を訴えていたウィシュマさんの死に至る経緯などについて、佐野局長は「本庁から調査を受けている身なので、説明できることは限られる」とし、十分な説明がなかった。妹らは「やましいことが無いのなら、映像を見せてほしい」と訴えたといい、ポールニマさんは「逃げているような印象だった」と語った。
亡くなった居室は遺族と幼なじみの4人に限り公開された。ワユミさんは「小さな部屋で動物の部屋みたいだった」と時折、涙ぐみながら語った。母スリヤラタさん(51)は娘の死後、精神的に参って体調を崩しているという。ワユミさんは「母の疑問に答えられない。真相が分かるまで帰れない」と述べ、22日の帰国予定を延期するという。
室内の映像について遺族代理人の指宿昭一弁護士は「本人の表情や痩せ方、声の調子、職員の対応から、点滴を含む医療の必要性と入管側の責任が明らかになるだろう」と公開の意義を強調した。
入管側は同行した弁護士や国会議員による居室視察を「保安上の理由」で拒否した。同行した福島瑞穂参院議員は「入管法改正案を国会で議論している時に、誠実に向き合わないことは問題だ。何を隠そうとしているのか」と話した。【川瀬慎一朗】