当選無効となった国会議員の歳費返還を可能にする歳費法改正について、自民党は9日、今国会は見送る方針を固めた。財産権などとの兼ね合いで慎重な検討が必要との判断からだ。公職選挙法違反で有罪が確定した河井案里元参院議員の大型買収事件が議論の発端だけに、問題を先送りする同党の姿勢を、公明党は問題視している。
歳費法改正を検討する自民党プロジェクトチームの座長を務める柴山昌彦幹事長代理は9日開いた第2回会合後、記者団に「今国会中は困難を伴うのではないか」と述べ、先送りはやむを得ないとの認識を示した。
河井氏は自民党から立候補した2019年参院選広島選挙区を舞台に買収事件を起こし、今年2月に議員辞職するまでに歳費など約4900万円を受け取った。自民党は同氏の当選無効に伴う4月の再選挙で批判を浴び、敗北した経緯もあり、歳費返還を認める法改正を唱える立憲民主党などに歩調を合わせていた。
歳費の返還額をめぐっては、公明党が4割、立憲が全額を主張している。柴山氏は、憲法が国会議員について相当額の歳費を受けると規定していることを踏まえ、「憲法上、筋の通った結論を出す必要がある」と指摘。今後、専門家の意見を聴取して慎重に検討を進める考えを示した。
これに対し、公明党の山口那津男代表は記者団に「極めて遺憾だ」と表明。同党が重視する7月の東京都議選や秋までにある衆院選を念頭に、「この国会で次の選挙前に一定の答えを示すのが大切ではなかったか。有権者が厳しい目で見ている」と述べ、自民党の対応に苦言を呈した。
[時事通信社]