医療用品の購入を装って経費を詐取したとして近畿大医学部法医学教室(大阪府大阪狭山市)の元主任教授、巽信二容疑者(66)が9日、大阪府警に詐欺容疑などで逮捕された。近畿大によると、巽容疑者は昭和58年に助手として法医学教室に入り、講師や助教授を経て平成19年に主任教授となった。殺人事件など重大事件の解剖も多く担い、権威ある解剖医としてメディアに登場することもあった。
約40年間にわたり府内で計約4千件を担当した実績がある一方、些細(ささい)なことで激高し謝罪を要求されたという声も。ある警察関係者は「昔は腰が低く、悪い印象はなかったが、いつからか横柄な態度が目立つようになった」と明かす。
特に、法医学教室トップの主任教授になってからは「『先生』や『教授』でなく、『主任教授』と呼ばないといけない。一度機嫌を損ねると取り合ってもらえなかった」と振り返る。別の関係者は「部下を怒鳴り散らすこともあった。(教室内で)誰も逆らえない雰囲気があった」と話した。
府内ではおおむね年間約1万3千人が病院以外で亡くなるなどした変死体として取り扱われる。このうち犯罪に巻き込まれた疑いがあり、司法解剖されるのは500件程度。近大は府南部の警察署から140件前後を依頼されているという。
ある警察幹部は「警察は解剖を引き受けてもらう立場。解剖医が『主』、警察が『従』という関係になってしまうことがある」と指摘。巽容疑者については「逮捕容疑が事実であれば、長年携わるうちに司法解剖を私物化してしまったのだろうか」と語った。