新型コロナウイルスの感染拡大に伴い10都道府県に出されている政府の緊急事態宣言が、沖縄県を除いて20日で解除されることが決まった。感染者数を抑え込めていない中で、なぜこのタイミングの解除なのか。ワクチンを打ちに来た人たちに聞くと、「東京オリンピック開催ありき」と批判する声も上がった。
自衛隊が東京・大手町で運営するワクチンの大規模接種センター。これまでは高齢者に限られていたが、17日から対象者が18~64歳にも拡大された。接種に来た人に緊急事態宣言の解除の賛否を聞くと、どちらの意見の人も「解除の判断は五輪が念頭にあるのだろう」と口をそろえた。
神奈川県厚木市の斎藤康子さん(65)は「宣言を出しても感染者数が激減していないので効果は薄いのだろうけど、増やさないためには続けた方がいい」と話す。感染リスクを減らすため、同じ県内に住んでいても子どもや孫に1年以上会っていないという。
政府は16日に大規模イベントの人数制限を最大1万人とする方針を明らかにした。五輪もその基準に準ずることを基本としている。一方で政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長ら有志は、無観客も選択肢にするよう求める方針だ。斎藤さんは「政府が外部の声を押し切って五輪に突き進まないか心配だ。今夏の開催はやめるべきだ」と話す。
埼玉県ふじみ野市の会社経営の男性(68)も「宣言の解除は五輪ありき」といぶかる。その上で、「もし五輪中に感染が拡大すれば、今の政権は終わりだ」と吐き捨てるように言った。
一方、東京都中野区の会社員男性(57)は「重症者数は減っていて、ワクチン接種の効果が表れていると思う。さらに接種が進めば医療現場への負担も減るのではないか。経済を回すため、もう宣言を解除してもよい」と政府に理解を示す。さらに、「五輪を見据えた宣言の解除なのだろうけど、大会の準備のことを考えると妥当だ」と話した。
スナックを経営する横浜市の沢田みさ子さん(73)も宣言の解除を歓迎する。宣言中はランチ営業だけとなり、酒の提供ができないため売り上げは平時の1割未満だ。沢田さんは「頑張ってきたアスリートのためにも五輪の開催は当然だ」と話した。【土江洋範】