「主文。被告人を死刑に処する」。福島県三春町の路上で昨年5月、清掃活動中の男女2人をトラックではねて殺害したとして、殺人罪などに問われた盛藤(もりとう)吉高被告(51)に対し、24日に求刑通り極刑を言い渡した福島地裁郡山支部の裁判員裁判。「長く刑務所に入っていたい」という被告の身勝手な動機で無差別に殺された被害者遺族や知人らは閉廷後、「自分の罪と向き合ってほしい」と訴えた。【肥沼直寛、玉城達郎、熊田明裕】
盛藤被告は、これまでの公判と同様、白いワイシャツにジーンズ姿で出廷した。開廷する直前、自席に着いてからは肩で息を続け、緊張している様子だった。
「主文は後回しにして、理由から述べます」。小野寺健太裁判長はそう述べると、約20分にわたり判決理由を読み上げた。証言台の席に座った盛藤被告は、うつむきながら聞き続けているようだった。
判決によると、事件は昨年5月31日朝に起きた。知人から盗んだトラック(約2・5トン)を運転した盛藤被告は国道288号で、面識のない三瓶美保さん(当時52歳)と橋本茂さん(同55歳)をみつけ、Uターンして時速60~70キロまで加速してはねて殺害し、逃走した。
「犯行により、2人の尊い命が奪われた。清掃ボランティアに参加して道路を歩いていただけで何ら落ち度もなく、突然理不尽に生命を奪われた結果は重大である」。静まりかえった法廷に、裁判長の声が響いた。
盛藤被告は死刑を言い渡された時も、微動だにせず聞き、法廷を後にした。
県内の裁判員裁判の死刑判決は、2013年の会津美里町夫婦強殺事件以来、2例目。
「私たちは苦しみ続ける」 遺族がコメント
亡くなった三春町の会社員、橋本さんの妻と長男は公判に出廷し、検察官の後ろの席に座り、裁判長が読み上げる判決理由を聞いていた。妻は声を押し殺して涙を流し、判決文の最後に裁判長が死刑を宣告すると、手に持っていたハンカチを強く握りしめ、長男は目を真っ赤にし、法廷を後にした。
橋本さんの妻は、代理人弁護士を通じてコメントを発表した。
「犯人の身勝手な夢をかなえるため2人もの命を奪った。言語道断です。極刑という重い刑は当然だと思います。主人はどんなことがあっても、もう戻っては来ませんし、私たちは許すことはありません。私たちはこの後も苦しみ続けます」と胸中を記した。
さらに、「この事件で、悪意を持って車を運転すれば圧倒的な力を持った“走る凶器”になると知っていただけたと思います。“凶器”を人に向ければ、命は奪われます。殺人になるのです。判決で、車が関係した事件でも極刑になると知ってもらって、このような事件が起こらないための抑止になれば幸いです」とつづった。
亡くなった橋本さんと三瓶さんが所属していた市民団体「桜川をきれいにする会」の影山初吉会長(73)は公判を傍聴した後、報道陣の取材に応じた。影山さんは事件当時、2人と共に現場の路上で清掃活動をしていた。「(被告が運転する)トラックがUターンして全速力で走ってきた。(被告は)無関係の仲間2人の尊い命を突然奪ったので、当然の判決だ。無差別で残虐。許すことはできないので、死をもって償ってもらいたい」と語気を強めながら話していた。