名古屋市の河村たかし市長が、東京五輪ソフトボール日本代表・後藤希友選手の金メダルを無断でかじった問題が、大きな波紋をよんでいる。 後藤選手が今月4日、表敬訪問した際、河村市長は突然マスクを外し、後藤選手に断りもなく金メダルを口に入れ、歯をあてて噛むポーズをとった。 これを受け、柔道の高藤直寿選手やフェシング元日本代表の太田雄貴さんらが河村市長の振る舞いを「選手に対するリスペクトが欠けている」などと批判。さらに後藤選手が所属するトヨタは「残念に思う」と、河村市長に反省を求めた。 強い批判を受け、河村市長は5日、「ご本人様の長年の努力の結晶である金メダルを汚す行為に及んだ」などと謝罪した。しかし批判はやまず、6日に予定されていた名古屋市と名古屋グランパスエイトとの包括協定の締結式が中止となってしまった。 SNSには「まじでキモい」などと河村市長を強く非難するものから、「器物損壊では?」と法的問題を問う声も上がっている。果たして、河村市長の行為は、法的問題にも発展する可能性はあるのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。 ●「器物損壊罪」は成立する? ――河村市長の行為には他のメダリストからも疑問の声があがるなど、強い批判を受けています。 まず、刑事責任の面から検討します。実際に立件されるかどうかは別にして、理論的には確かに器物損壊罪(刑法261条)の成否が問題となります。 河村市長が金メダルをかじったことにより金メダルに歯形などの傷がついてしまった場合には、物質的に金メダルの形体を変更・滅失させたといえ、器物損壊罪(刑法261条)が成立します。 ――金メダルに何ら傷がつかなかった場合はどうでしょうか。 器物損壊罪の「損壊」は、器物を物質的に変更、滅失させる場合だけではなく、事実上もしくは感情上、物の本来の効用を害すること、いわゆる物の効用を喪失させる行為も含むとされています。 裁判例では荷札をとりはずす行為(最高裁昭和32年4月4日判決)、他人の飲食器に放尿する行為(大審院明治42年4月16日判決)、自動車のフェンダーなどに人糞を塗りつける行為(東京高裁平成12年8月30日判決)などがこれに該当するとされています。 ――今回のケースはどう考えられますか。 今回のケースで、河村市長は金メダルを口でかじり唾液等を付着させていますが、過去の裁判例の放尿や人糞などと比べれば、感情上物の本来の効用を害する程度は明らかに低いと思われます。
名古屋市の河村たかし市長が、東京五輪ソフトボール日本代表・後藤希友選手の金メダルを無断でかじった問題が、大きな波紋をよんでいる。
後藤選手が今月4日、表敬訪問した際、河村市長は突然マスクを外し、後藤選手に断りもなく金メダルを口に入れ、歯をあてて噛むポーズをとった。
これを受け、柔道の高藤直寿選手やフェシング元日本代表の太田雄貴さんらが河村市長の振る舞いを「選手に対するリスペクトが欠けている」などと批判。さらに後藤選手が所属するトヨタは「残念に思う」と、河村市長に反省を求めた。
強い批判を受け、河村市長は5日、「ご本人様の長年の努力の結晶である金メダルを汚す行為に及んだ」などと謝罪した。しかし批判はやまず、6日に予定されていた名古屋市と名古屋グランパスエイトとの包括協定の締結式が中止となってしまった。
SNSには「まじでキモい」などと河村市長を強く非難するものから、「器物損壊では?」と法的問題を問う声も上がっている。果たして、河村市長の行為は、法的問題にも発展する可能性はあるのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。
――河村市長の行為には他のメダリストからも疑問の声があがるなど、強い批判を受けています。
まず、刑事責任の面から検討します。実際に立件されるかどうかは別にして、理論的には確かに器物損壊罪(刑法261条)の成否が問題となります。
河村市長が金メダルをかじったことにより金メダルに歯形などの傷がついてしまった場合には、物質的に金メダルの形体を変更・滅失させたといえ、器物損壊罪(刑法261条)が成立します。
――金メダルに何ら傷がつかなかった場合はどうでしょうか。
器物損壊罪の「損壊」は、器物を物質的に変更、滅失させる場合だけではなく、事実上もしくは感情上、物の本来の効用を害すること、いわゆる物の効用を喪失させる行為も含むとされています。
裁判例では荷札をとりはずす行為(最高裁昭和32年4月4日判決)、他人の飲食器に放尿する行為(大審院明治42年4月16日判決)、自動車のフェンダーなどに人糞を塗りつける行為(東京高裁平成12年8月30日判決)などがこれに該当するとされています。
――今回のケースはどう考えられますか。
今回のケースで、河村市長は金メダルを口でかじり唾液等を付着させていますが、過去の裁判例の放尿や人糞などと比べれば、感情上物の本来の効用を害する程度は明らかに低いと思われます。