鳥取県は2020年度のイノシシによる農業被害額が過去10年で最大の7257万円に上ったと発表した。個体数が増加しているとみられ、20日には鳥取市内で住民がイノシシ2頭に襲われてけがをした。県は捕獲数を増やすなど対策を進めるが、追いついていないのが現状だ。【野原寛史】
県鳥獣対策センターによると、イノシシによって野菜や果物が荒らされる農業被害が7000万円を超えるのは10年度以来。15年以上前は1億円超の被害が続いたが、柵を設けたり捕獲数を増やしたりする対策を講じ、11~15年度の被害額は4000万~5000万円程度で推移していた。20年度は過去最多の約1万2000頭を捕獲したが、近年の暖冬で冬を越すイノシシが多く、多産もあって個体数はむしろ増えているとみられる。
20日にイノシシに襲われけが人が出たのは県庁の北西約1キロ、鳥取市湯所町の山沿いの住宅地だ。以前から夜間はイノシシ出没が確認されていたが、この時は早朝の午前5時ごろだった。同センターは、一部の住民が餌を与えたり生ゴミの管理が甘かったりする背景があり、人里の食べ物の味を覚えたイノシシが進出している可能性を指摘。市街地でも、山に近いエリアでは生ゴミや野菜、果物を屋外に置かないよう呼び掛ける。
同市鹿野町の猟師、伊吹達也さん(57)は「近隣でも柵を突破された農業被害が少なくない。県は捕獲数や猟師を増やす取り組みをしているが、イノシシの頭数が減った実感はない」と話す。19日には大阪府内でイノシシなどに襲われた可能性のある男性が死亡した。イノシシは鋭い牙を持ち、伊吹さんは「丸腰で襲われたら人間に勝ち目はない。遭遇したら絶対に刺激せず、距離を取るか隠れてほしい」と訴える。