菅首相「先送り論」打ち消し、岸田氏に追い風…石破氏は青木氏に「今回は迷惑かけません」

自民党総裁選への出馬を表明済みの岸田文雄・前政調会長は、政策面などで着々と準備を進めている。菅首相(自民党総裁)が衆院解散による総裁選先送りを検討しながらも、党内の激しい反発を受け、打ち消しに追われたことは、首相の求心力低下につながったとの見方が広がる。岸田氏に「追い風」が吹くが、岸田派では石破茂・元幹事長の出馬を警戒する声も上がる。

岸田氏は1日、出馬報告のため、議員会館の党所属議員の部屋を回った。首相再選支持を表明した石原派会長の石原伸晃・元幹事長からは激励を受けた。その後、議員会館の自室で2日の政策発表の準備に時間を割いた。
総裁選先送り論が駆け巡った8月31日夜は、衆院解散を阻止する手段がない岸田派内に動揺が広がった。だが、結果として岸田派以外からも首相への不満が噴出し、「岸田氏に良い流れ」(周辺)となった。
中谷元・元防衛相は1日、谷垣グループの会合で「勝手な個人の都合で(総裁選日程を)変更すれば党の信頼を失う」と訴えた。福田達夫衆院議員(細田派)ら派閥横断の中堅・若手で作る有志グループは「衆院選前に総裁選を実施すべきだ」との意見で一致した。
そもそも首相が先送りに傾いたのは、岸田氏の勢いに危機感を強めているためだ。首相が二階幹事長の交代を決断したのも、岸田氏が掲げた党役員の任期制限を含む党改革案が引き金になったとみられている。
党内では、苦境の首相が「岸田氏を幹事長に就け、総裁選回避を狙う」(党関係者)との臆測も飛んだ。強気の岸田氏は8月31日のBS日テレの番組で、幹事長を打診されても「受けることはない」と明言した。
岸田氏はテレビ出演や記者会見などで露出を増やし、党員・党友票獲得につなげたい考えだ。政策では「政治とカネ」の透明性向上や、中間層の拡大を目指す「令和版所得倍増」などを訴える。ただ、政府の新型コロナウイルス対策への批判には派内に慎重意見が多い。岸田氏は安倍内閣時代に党政調会長も務め、同派若手は「継続案件も多く、下手に批判すれば、跳ね返ってくる」と語る。
世論調査で支持を集める石破氏の動向も警戒している。同派幹部は「『選挙の顔』として期待される石破氏は脅威だ」と明かす。
石破氏は1日、東京都内で、参院竹下派に影響力を残す青木幹雄・元参院議員会長と面会した。安倍前首相と石破氏の一騎打ちとなった2018年総裁選で、青木氏は石破氏を支援した。竹下派幹部によると、石破氏は「今回は迷惑をかけません」と伝えたという。青木氏は、「出馬見送り」と受け止めたとされる。
首相は、近く踏み切る党役員人事と小規模な内閣改造で、石破氏の要職打診を検討している。石破氏が要職に就けば、総裁選に出馬しない公算が大きい。