岸田文雄氏、森友問題への態度一変「再調査考えてない」安倍晋三前首相に忖度?…自民党総裁選

自民党総裁選(17日告示、29日投開票)への立候補を正式表明している岸田文雄前政調会長(64)は7日、森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんについて「再調査は考えていない」と発言した。2日には同問題について「さらなる説明を」と述べていただけに、安倍晋三前首相(66)に配慮した変節とも取られかねない軌道修正となった。
いち早く総裁選出馬を明言し、党役員任期制限などの改革を打ち出すなど「男を上げた」との声が聞かれていた岸田氏が、森友発言を軌道修正した。
菅首相が電撃退陣を表明する前日の2日夜、岸田氏は森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざんに関し、「調査が十分かどうかは国民が判断する話だ。国民は足りないと言っているわけだから、さらなる説明をしないといけない。国民が納得するまで努力することが大事だ」と述べ、十分な説明責任を果たせていないとの認識を示していた。
ところが、7日の記者団への説明では「既に行政において調査が行われ、報告書も出されている」と指摘。「再調査は考えていない」と必要性を否定した。その上で「裁判が行われており、さまざまな証拠が提出された上で判決が出される。それを踏まえて必要であれば国民に説明すると申し上げている。従来のスタンスと全く変わっていない」とした。
昨年の総裁選ソッポ向かれ 軌道修正の背景には、5日前からは一変した戦況がある。菅氏の不出馬を受けて出馬を模索する動きが相次ぐ中、安倍氏は高市早苗前総務相(60)を支援する意向を示した。昨年の総裁選でも、岸田氏は安倍氏の後継一番手に名前が挙がっていたが、前首相が菅氏の支援に回ったことで敗北。党内からは「安倍氏が総裁選で高市氏の支援に回ったのは、岸田氏の発言に怒ったからだ」(幹部)との声があがっている。
岸田氏は6日夜のインターネット番組でも森友問題について「再調査をするとか、そういうことを申し上げているものではない」とし、2日の発言を事実上修正。この日の発言の真意を問われ「(安倍氏への配慮は)全くない」と否定したが、永田町では議員票獲得をにらみ、森友問題で批判を浴びた安倍氏や麻生太郎副総理兼財務相への配慮ではないか、との見方が有力だ。
党役員任期制限の見直しなど執行部に対しても忖度(そんたく)なしの姿勢を見せ、若手や中堅から支持を広げていただけに、今回の軌道修正が求心力の低下につながるとの懸念も出ている。