日本に暮らす「働けない外国人」たちの医療格差。このまま放置するとどうなるのか

年収と健康には因果関係がある――近年、さまざまな研究によってそんな事実から明らかにされてきた。格差が広がる日本でも問題視され始めた「健康格差」が今、新型コロナの影響で深刻化している。忘れてはならないのが在日外国人の存在だ。

◆日本に暮らす「働けない外国人」たちの現状とは?

たしかに在日外国人のほとんどは在留資格を保持しており、健康保険に加入できる。しかし、なかには在留資格も得られず、祖国にも帰れずに医療福祉のエアポケットの中で苦しんでいる外国人がいる。例えば難民申請が認められず、仮放免として暮らしている人たちだ。クルド人難民支援に力を入れているNPO法人「POSSE」の岩橋誠氏が話す。

「クルド人は日本だと埼玉県川口市と蕨市を中心に暮らす人が多い。クルド人に限らず難民認定申請が認められず、日本の在留資格を得ていない外国人は、働くことも健康保険への加入も認められません」

日本の難民認定申請の認定率は1.2%、’20年に難民認定を受けられた外国人はたった47人である。

「在留資格がない外国人は働くことが許されていません。なかには人づてでなんとか日雇い仕事をする人もいますが、夫婦と子供3人の世帯収入が100万円台という世帯が多いんです。食べていくのがやっとなので、当然ながらなかなか病院にも行けません。しかも、ただでさえ苦しい状況にコロナが拍車をかけました。これまではコミュニティ内でなんとか助け合ってきたクルド人難民たちも、コロナによって働き口をなくしている。POSSEでは食料支援もしていますが、それだけでは不十分です」

◆体調が悪くても病院に行けない

POSSEが昨年11月にクルド人難民の相談会を開催したときに事情を聞いたところ、彼らの所持金の平均額は1万5000円。半数以上が体調が悪くても病院に行けていなかったという。

食費を削らざるを得ない彼らの食生活は健康的とはいえない。食料支援も日持ちがするパスタなどの炭水化物が中心だ。

「恐らく若い方も病気(精神疾患など)が多いはずなのですが、治療に行けていないので病気があっても本人も自覚できていない状態が多いと思います」

◆骨折の治療費が80万円。心臓手術も受けられない

「彼らは健康保険に加入できないので、全額自己負担の自由診療で受診しなければならない。子供の腕の骨折の治療費として、病院から70万~80万円も請求されたという事例もあります」

一括で治療費を支払えなければ分割払いを求められる。さらに適切な治療を受けられずに生命の危機に瀕している子供もいるという。

「3、4歳の子供がバイパス手術が必要な心臓疾患を患っているのに、健康保険がないから手術を受けられないという声も聞きました。ご両親は途方に暮れています」

POSSEではクルド人支援を目的にしたクラウドファンディングも行った。集まったお金は食料支援だけでなく、POSSEボランティアの大学生が行っているクルド人の若者への学習支援などに使われるという。

「難民であっても子供たちは学校に通っています。行政は難民の存在を把握しているはずですし、彼らが内包する『働けない、健康保険にも入れない』という状況を知らないわけはありません。自治体に対して保険加入や生活保護の適用を求めていますが、無視ばかり。ようやく埼玉県内の自治体が法務省に要望を出したようですが、どれだけ改善するかは未知数です」

◆健康格差。このまま放置するとどうなるのか

また、無料低額診療を行う病院ではこのような外国人に対しても門戸を開いており、実際に外国人の利用者も多いという。しかし、保険証を持たない人の場合は全額が病院の負担になるので、やはり長期間の入院などに対処するのは難しいのが現状だ。

日本人だけでなく、外国人の間でも広がり続けている健康格差。このまま放置するとどうなるのか。

「50歳前後の氷河期世代がワーキングプアから、さらに社会的に排除されるリスクが高まっています。そういう人たちをこのまま放置すれば、将来的には生活保護受給者が急増して社会保障費を圧迫し、結局は税金で支えることになる。『健康問題は自業自得』という考え方ではなく、最低限の保障をしたうえで働ける人には働ける環境をつくって、その人の潜在能力を引き出す社会にしないといけないのです」(千葉大学教授の近藤克則氏)

健康に自信がある人にとっても、健康格差は他人事ではないのだ。

【近藤克則氏】
千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門教授。早くから健康格差について研究を進めている。著書に『健康格差社会ー何が心と健康を蝕むのか』(医学書院)など多数

<取材・文/週刊SPA!編集部>

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