京王線車内で17人が重軽傷を負った事件から7日で1週間。警視庁の捜査や京王電鉄の調査で、当時の状況が徐々に明らかになってきた。車内の非常通報ボタンが何度も押されたが、マイク越しに車掌に状況を伝えられた人はおらず、通話機能が知られていなかった可能性もある。(相本啓太、大井雅之)
捜査関係者や京王電鉄によると、最初に非常通報装置のボタンが押されたのは10月31日午後7時56分、京王八王子発新宿行きの上り特急電車(10両)が時速約45キロで布田駅(調布市)を通過中だった。
通報したのは4号車の乗客だ。隣の3号車で、職業不詳の服部恭太容疑者(24)(殺人未遂容疑で逮捕)が乗客男性(72)の右胸をナイフで刺し、車内はパニック状態に陥っていた。
「どうしましたか?」。車掌は非常通報装置のマイクで乗客に呼びかけたが、応答はなかった。続いて3号車、6号車、7号車でも非常通報ボタンが押されたが、マイク越しに会話に応じる乗客はいなかった。
乗客は計約300人で、1車両あたり平均約30人が乗っていた。この前後、服部容疑者は5号車でライター用オイル約2リットルをまいて放火。車両の天井まで炎が上がり、車内に煙が充満した。乗客らは車両前方と後方に分かれて逃げた。
同57分、最後尾の1号車にいた車掌は乗客から「何かをまいて刃物を持った人がいる」と聞き、運輸指令所に連絡。同じ頃、先頭車両の運転士は乗務員室の扉をたたく音で異常を察知し、ブレーキをかけた。
同58分、電車は国領駅(調布市)に緊急停車した。所定位置の1メートル手前で止まったため、運転士が調整しようとしたが、乗客がドアを開けようと非常用ドアコックを操作。コックを使うと電車は加速できなくなる仕組みで、前に進めなかった。それだけでなく、上り坂の勾配を受け、さらに1メートル後退してしまった。