10メートル崖下の川に車転落、死亡事故発生でもガードレール設置は見送り

山梨県道志村の国道413号で今年5月、乗用車がガードレール(防護柵)のない部分から約10メートル崖下の川に転落し、運転していた大学生が死亡する事故があった。道路脇に高さ4メートル以上の崖がある場合、防護柵を設置する目安の一つとなる。だが、道路を管理する県は事故後に検証した結果、設置しないとの判断に至った。防護柵の設置が見送られた背景を探った。(大野琳華)
■ 観光で人気の道
大月署によると、事故は5月7日午前0時頃に起きた。現場は片側1車線で、緩やかな左右のカーブが続く。車は道路左に飛び出した後、幅約10メートルの畑を突っ切り、その先の崖から転落したとみられる。制限速度の時速40キロを超えていた可能性があるという。
国道413号は相模原市から山中湖方面を結ぶ道志川沿いの道路。「道志みち」の名で呼ばれ、ツーリングやドライブなど観光客に人気がある。一方、制限速度を超えて走る車両が後を絶たない。道志村内の区間では昨年、141件の事故があった。事故防止などの目的で防護柵が設置されている区間もあるが、今回の事故現場のように未設置の場所もある。
■ 畑の幅は10メートル
国土交通省によると、防護柵を設置するかどうかは、日本道路協会出版の解説書などを基に、道路管理者が判断する。解説書は道路脇に崖がある場合について、「崖が高さ4メートル以上で傾斜角度が45度以上」の場所で設置するよう求めている。
今回の事故では、車が転落した崖の高さは約10メートルあったが、県内の国道413号を管理する県富士・東部建設事務所吉田支所は、「道路脇に崖はない」と判断していた。道路と崖の間に幅約10メートルの畑が存在することが理由だ。解説書では崖の高さには基準があるが、道路からの距離については具体的な基準は示されていない。
■ 識者「多角的判断を」
事故後、同支所は改めて防護柵の必要性を検討したが、「現場の状況や防護柵の設置基準から、設置することは考えられない」との結論に至ったという。解説書では、防護柵を設置することで歩道が狭くなり、歩行者が通りにくくならないかといった点や、景観に与える影響なども考慮するよう求めている。
同支所は防護柵の設置は見送ったが、事故現場近くに減速を促す道路標示を追加したほか、カーブに注意を求める標識を新設した。
交通事故に詳しい山梨大学の伊藤安海教授(安全医工学)は、「基本的に防護柵はあった方が安全だが、費用対効果の面からも全ての場所に設置するのは難しい」と指摘。その上で、一見、さほど危険には見えず注意を怠ってしまうような場所もあるなど、道路を巡る環境が複雑な点を挙げ、「道路管理者は数値の基準だけに頼らず、周辺住民や警察などの意見も踏まえて多角的に判断することが必要だ」と訴える。