17日に官製談合防止法違反などの容疑で、山梨県富士川町長の志村学容疑者(71)と元設計事務所経営の小林一被告(72)=市川三郷町での同法違反で起訴=が逮捕された。隣接する市川三郷町では、9月に当時の町長が逮捕された官製談合事件が、贈収賄事件へと発展。富士川を挟んだ二つの町で起きた事件には、ともに小林容疑者の事務所が関与しており、公共事業を巡る不透明な実態が浮上した。【田中綾乃、梅田啓祐】
県警によると、市川三郷町の事件について小林容疑者への捜査を進める中で、富士川町についても官製談合の疑いが浮上した。志村容疑者は「間違いありません。立場を悪用した」などと容疑を認めており、小林容疑者もおおむね認めているという。志村容疑者が小林容疑者から直接要請を受けて、都合のいい業者を選定し、業者名を教えたとみており、現金の授受についても視野に入れ捜査している。県警は17日午後7時45分から、捜査員約30人が捜索のため富士川町役場に入った。対応に追われた町職員らが不安な表情で見守った。
志村町長は、県職員や甲州市助役を経て、2007年に旧増穂町長に初当選。10年には、旧鰍沢町との合併に伴って誕生した富士川町長選にも出馬し、3期連続で当選している。
発足以来、町政を担ってきた志村町長の逮捕を受け、斎藤靖副町長は「町として大変驚いている。報道された内容以外は把握していない。町民をはじめ多大な迷惑をかけることとなりおわび申し上げます。捜査に協力する」とのコメントを発表した。
志村町長らの逮捕容疑は、2人は共謀し、設計業務の指名競争入札を巡り、今年3月ごろ、小林容疑者の事務所に落札させるため、談合に応じる可能性のある5者を志村町長が選び、小林容疑者に業者名を示したなどとしている。
富士川町に隣接する市川三郷町では、16年と17年に町が発注した公共施設の設計業務を巡り、21年10月に当時の町長が加重収賄容疑で逮捕され、小林容疑者も官製談合防止法違反容疑で逮捕されている。小林容疑者は、17年発注の設計業務について、町議会で自身に不利な発言をしないよう町議だった男性に要求し、見返りとして21年6月に現金30万円を渡したとして、贈賄容疑でも逮捕された。