逮捕の多古町長、林氏演説など動画7本投稿 「負けたら終わり」

10月の衆院選で地位を利用して特定候補への投票を依頼したとして、千葉県多古町長の所一重容疑者(56)が公職選挙法違反(公務員の地位利用など)容疑で逮捕された事件で、所容疑者が同町幹部職員と作る無料通信アプリ「LINE(ライン)」のグループに、千葉10区で当選した自民党の林幹雄氏(74)の街頭演説などの動画7本を投稿していたことが、同町への取材で判明した。県警はグループの職員から、やり取りの記録の提供を受けるなどし、捜査を進めている。【山本佳孝、中村宰和、長沼辰哉】
町によると、ライングループは副町長や課長など幹部職員21人がメンバーで、行政情報などを共有するために使っているという。投開票日の10月31日午前7時55分には、所容疑者が林氏に言及し「小選挙区で1票でも負けたら終わりです。貴重な一票を無駄にしないでください」と投稿した。
所容疑者が投稿した林氏の選挙活動に関わる動画は、公示日の同月19日の街頭演説の様子や、25日の演説会(投稿は26日)、岸田文雄首相が応援に訪れた29日の街頭演説を撮影した3~5分の7本。動画には文章は付けられていなかったという。
ライングループのメンバーの高橋正総務課長は「(所容疑者が)林先生を推しているのは分かっていたが、投票を強要された気はしていない」と話す。また、平野欽作副町長も「投票行動に影響はない」との認識を示している。県警捜査2課は、グループラインを削除しないようメンバーに要請し、やり取りを表示した画面を接写するなどしたという。
同課は19日、所容疑者を千葉地検に送検。また、町役場を関係先として家宅捜索した。
空港の機能強化見据え 所容疑者、国に働きかけ期待か
多古町長の所一重容疑者(56)は、成田空港の3本目の滑走路新設など機能強化を町発展の契機ととらえ、衆院選千葉10区で自民党のベテラン、林幹雄氏(74)を支援することで国への働きかけを期待した可能性がある。
所容疑者は衆院選投開票日の10月31日、副町長や課長らがメンバーの無料通信アプリ「LINE(ライン)」に、「政権与党の林幹雄候補なくして、成田空港の機能強化は予定通り進みません」と投稿していた。
機能強化に期待する背景には危機感があった。所容疑者は2020年3月の町議会で「町が空港と共に発展していないことは事実で、町は空港の裏側とやゆされる」と答弁した。現在の空港用地1198ヘクタールの大半が成田市で、多古町はわずか1ヘクタールに過ぎない。機能強化は29年3月完成を目指して空港用地を1099ヘクタール拡張する計画で、うち町は309ヘクタールと28%を占めるため、税収増が見込まれ、発展につながるとの期待がある。【中村宰和】
動画の投稿内容
左から投稿日、内容
10月19日 同日の自民党の林幹雄氏の街頭演説
26日 25日の林氏の演説会
29日 同日の林氏の街頭演説。岸田文雄首相が駆けつけた