大阪市北区の繁華街・北新地にある雑居ビル4階のクリニックから出火し、24人が死亡した火災で、殺人と放火の疑いが持たれているのはクリニックに通院していた男(61)とみられることが分かった。男は来院直後、出入り口付近の暖房器具付近に置いた紙袋を蹴ると液体が流れ出火したという証言もあり、明確な殺意があった可能性もあるとみて大阪府警が実態解明を進める。
関係先からクリニックの診察券
火災は17日午前10時20分ごろ、心療内科「西梅田こころとからだのクリニック」で発生した。目撃情報によると、男はエレベーターから出てすぐの出入り口付近で、暖房器具の近くに紙袋を置いて蹴り倒し、漏れ出た液体に引火したという。
救急隊到着時、被害者の多くは出入り口付近から離れた場所に倒れていた。4階から逃げるのはエレベーターとその近くの非常階段しかなく、被害者らが逃げ場を失い少しでも火元から離れようとした可能性がある。
死亡が確認されたのは20~60代くらいの男性14人と女性10人。いずれも目立った外傷はなく、府警は一酸化炭素(CO)中毒死の可能性がある。
他に搬送された男女4人の中には、放火の疑いがもたれている男も含まれ、意識不明の重体だという。男の関係先からはクリニックの診察券が見つかった。出火の約30分前には男の自宅とみられる大阪市西淀川区の3階建て住宅でも放火とみられるボヤが発生しており、関連を調べる。
クリニックではこの日、休職した人らの職場環境復帰をサポートする集団治療を行う「リワークプログラム」が予定され、出火当時も多くの利用者が診察に訪れていたとみられる。
通院している50代女性によると、繁華街やオフィス街に近い立地から、院内は働き盛りの男性を中心に常に混み合っていて、待ち時間が1時間を超えることもあったという。西沢弘太郎院長は発達障害の診察で有名な人物で、通院する別の女性は「話を丁寧に聞いてくれて判断もてきぱきしていた」と語る。
家族によると、クリニックの西沢院長と連絡が取れていない。
西沢院長の知人で発達障害の人の就労、自立を支援する団体の代表、鈴木慶太さん(44)によると、「あまり多くはしゃべらないタイプで、とても謙虚な人。偉ぶった感じがなく、トラブルを助長するようなことは考えられない」という。
精神科や心療内科での患者と医師のトラブルについて、東京都内のある精神科医は「一般に症状が重い患者は病院や医師に敵意を向けることは少ないが、比較的軽症で気分変動が強い患者の中には、『仲間に入れてもらえない』という被害妄想を抱く人もいる。実際に興奮した患者から詰め寄られた経験がある」と語った。