「自白」は嘘なのか 岡山小3女児殺害、6日に地裁判決

岡山県津山市で平成16年、小学3年の女児=当時(9)=を殺害したとして、殺人罪などで無期懲役を求刑された無職、勝田州彦(くにひこ)被告(43)に対する裁判員裁判の判決公判が6日、岡山地裁で開かれる。被告は捜査段階で一時殺害を認めたが、公判では「(自白は)をでっちあげた」と無罪を主張した。検察側、弁護側双方の主張が真っ向から対立した審理の結論が注目されている。
遺体との整合性は?
被告が逮捕されたとき、事件発生から約14年もの月日が流れていた。凶器は見つからず、遺留物などの物証も乏しい。争点は、「自白」が客観的事実と一致し、実際に体験した人物でなければ語れない迫真性があるかどうかに絞られた。それを判断する一つが、供述した殺害方法と遺体の傷との整合性だ。
《女児の首を絞めながら床に倒れた。左手の刃物で腹を1回刺し、右手に持ち替えて胸を3回刺した》
この供述について、検察側は実際に刺し傷は4つあり、うち1つはほかの3つと場所や傷口の形が異なると指摘。女児の出血量が少なかったことも首を先に絞めていれば説明がつくとして整合性があると訴える。
一方、弁護側は供述では女児はあおむけのはずなのに、第一発見者は「うつぶせで倒れていた」と証言したことを重視。傷の数も表皮は一致するが、内臓には6つの損傷があり、「事実と矛盾する」と反論する。
「秘密の暴露」でも応酬
検察側は公判で、殺害方法以外にも「被告が犯人でないとすればおよそ説明が困難な事情」を列挙した。
《下校途中の後をつけて女児宅に入った。時間を尋ねると、(事件現場の)8畳居間に行き、時間を教えてくれた》
女児に接近した流れをこう語った被告。女児宅の玄関には掛け時計がある。しかし、母親の証言によると、女児は普段、居間の時計で時間を確認していた。
検察側は、女児の習慣と一致することに加え、現場の外観や間取り、下校経路も詳しく説明できたことを踏まえ、「作り話が偶然に一致したとは考えられない」とする。
対して、弁護側は「犯人しか知りえない『秘密の暴露』は存在しない」と応酬した。最終弁論によると、被告は発生当初から事件に興味を持ち、事件を特集したテレビ番組を録画して見返すなどして情報を集めていた。
間取りや下校経路はこの番組やほかの報道から十分推察できるとし、時計に関しては、「玄関に時計があるのに時間を尋ねること自体が不自然」と供述そのものを疑問視する。
迫られる難しい判断
被告が「自白」した理由も重要なポイントだ。
検察側は捜査関係者の誘導がなかったことに加え、逮捕前後の言動に着目。逮捕前に自身の母親に対し、殺害は否定するものの首を絞めたことは認める手紙を送ったり、精神鑑定を担当した医師に関与を認める説明をしたりしたことは「虚偽の自白であれば説明が困難」と、あえてを繰り返す必要がないと強調する。
一方、弁護側は「『やってもいないことを話すことはない』との前提で考えるべきではない」と強く警告する。重視するのは、被告の知能指数(IQ)が知的障害との境界にあり、誤ったやり方に固執してしまうという人格的特性だ。
被告は自白の理由を「警察官へのサービス」などと語ったが、「供述調書に署名しなければ証拠にならない」との考えに基づいた言動だと説明。母親への手紙も殺傷行為はしていないことを強調したいがために、あえて首を絞めて逃げたとのをつき、「かえって疑われることに考えが及んでいなかった」とする。
取り調べは録音録画されていたが、裁判所は映像を証拠として認めず、供述内容を文字化した「反訳書」を証拠採用。検察側がそれを法廷で読み上げる異例の手続きがとられた。裁判員に過度な印象を与える可能性を懸念したとみられ、それだけ裁判員は繊細で難しい判断を迫られた。(野々山暢)