1953年の開園以来、初めて雌がボスザルになった高崎山自然動物園(大分市)で、2頭の雄がボスを巡る恋のさや当てを繰り広げている。恋に落ちたボスがトップの座から転落する可能性もあり、園のスタッフは注視している。
園のニホンザルにはB群(677頭)とC群(362頭)の二つの群れがあり、園は先代ボスのナンチュウ(雄、推定31歳)にけんかで勝ったヤケイ(雌、9歳)を2021年7月、B群の序列1位とした。
ヤケイにB群序列6位のゴロー(雄、推定15歳)が近づいたのは21年11月初め。ヤケイは雄が雌にかみつくゴローの求愛行動を嫌がることなく受け入れた。「ヤケイの顔とお尻を見てください。真っ赤でしょ。恋をしている証しです」。12月中旬、園のサル寄せ場で職員は説明した。餌の小麦を食べるヤケイのそばにはゴローがいた。
しかし一時、ゴローがヤケイに関心を示さなくなった隙(すき)を突いて序列5位のルフィ(雄、推定18歳)が割って入った。ヤケイはルフィが近づくと逃げたり威嚇したりするが、ゴローは序列でかなわないルフィが来ると逃げてしまう。「ヤケイとゴローは相思相愛だと思うが、どうしてもルフィが邪魔をする」と園職員の下村忠俊さん(48)は気をもむ。
ヤケイはトップに就いた後、威嚇するようにしっぽを上げて歩き、木を揺らすなどボスらしい示威行動を見せていた。しかし、発情期に入ってそうした姿を見せなくなっているという。今後、発情して攻撃的になった雄がヤケイからボスの座を奪う可能性もある。
「神庭の滝自然公園」(岡山県真庭市)などでニホンザルを研究している大阪大人間科学部の山田一憲講師(比較行動学)は「神庭の滝でも雌が一時、群れのトップに立ったが、発情した雄ザルに地位を奪われた。高崎山は雄優位のニホンザル社会で極めて珍しいケース。3頭の関係が群れにどう影響するか、興味深い」と話す。【石井尚】
高崎山自然動物園
1953年3月に開園。大分市の高崎山(標高628メートル)周辺の農業被害を防ぐため、ニホンザルを餌付けし、観光資源とした。現在は市高崎山管理公社が運営・管理しているが、園職員の高齢化を理由に2022年4月から市直営になる。