コロナ無料検査に希望者殺到 医師「検査難民が続出している」

新型コロナウイルスの感染急拡大で、コロナ検査が厳しい局面に差しかかっている。自治体の無料検査には感染の有無を調べたい人たちが殺到し、予約が取りづらい状況だ。発熱などの症状のある患者を診察するクリニックからは、検査の逼迫(ひっぱく)で感染の判断が遅れて治療に影響しないか、懸念する声が出ている。
東京都杉並区の住宅街にある「桃井原っぱ公園」には、都が設置したコロナ無料検査場がある。ワクチン接種会場のプレハブ仮設を転用した検査場には連日、希望者が詰めかけている。
この会場の無料検査は事前予約制で、杉並区の男性(43)は25日夕、保育園に通う長女(5)と一緒に訪れた。長女と同じクラスの園児3人がコロナに感染したのに、保健所から濃厚接触者に該当するかどうかの連絡がなく、無症状ながら検査を受けに来たという。別の女性(40)も次女(5)の保育園で感染者が出たといい、「陰性なら安心して子どもを学校や保育園に通わせられる」と話した。同居の父親が感染したという女性会社員(56)は今後の出社を見据えて検査に訪れ「自宅で使える検査キットをもっと普及させてほしい」と望んだ。
東京都では、こうした無料検査を275カ所(26日時点)で実施する。濃厚接触の有無にかかわらずPCR検査か抗原検査を無料で受けることができ、無症状でも感染の有無を確かめたい人たちが来場している。
都は、PCR検査と抗原検査を合わせ、1日3万件の実施を想定している。しかし、対応する人員の不足などから実際の検査件数は下回っているという。
このほか、ドラッグストアでは抗原検査キットの品切れが相次ぎ、検査キットを無料で配布する世田谷区の公園には長蛇の列ができるなど、検査需要が急増している。
検査急増の背景には、政府が「ワクチン・検査パッケージ」の利用を一時停止し、大人数イベントや会食に参加する人には全員検査が求められるようになったこと、「エッセンシャルワーカー」の濃厚接触者の待機期間短縮に検査の陰性確認を条件としたこともあるとみられる。
地域の医療機関も検査需要の急増に苦慮している。東京都北区の「いとう王子神谷内科外科クリニック」には今月中旬以降、検査希望者がひっきりなしに来院し、25日はキャンセル待ちだけで50人に上った。PCR検査試薬の在庫は底を突き、検査会社からの結果の通知も遅れ気味だ。
診察後すみやかにコロナかどうか判断できなければ治療の開始が遅れる。例えば、61歳以上か、18歳以上で基礎疾患やBMI(体格指数)が30以上など重症化リスクのある患者向けの飲み薬は発症5日以内に使い始める必要があり、治療開始の遅れは問題だ。伊藤博道院長は「検査難民が続出している状況だ。重症化リスクの高い人の治療が遅れる事態は避けなければ」と危惧している。
杉並区の内科クリニック「たむら医院」も事情は同じだ。25日は午前9時の予約開始からわずか1分で午前中の予約がすべて埋まった。こちらも院内のPCR検査試薬の在庫は切れた。抗原検査キットはあと約2週間分の在庫があるが、どちらも再入荷が難しい。今月に入って25日までに検査したのは延べ約550人。田村剛院長は「このペースで検査すれば、キットはすぐになくなってしまう」と語った。
こうした状況の中、厚生労働省が症状のある濃厚接触者については検査を行わずに感染の診断ができるという新たな対策を示した。田村院長は負担の軽減につながるとしつつも「あくまで検査と診察の双方で判断することが基本だ」と話している。【金森崇之、秋丸生帆、内橋寿明】