どんな場合に「みなし陽性」? 導入めぐり自治体で差

新型コロナウイルスのオミクロン株による感染者の爆発的増加を受け、検査せずに医師の判断などで感染者とみなせる「みなし陽性(疑似症)」の仕組みが始まった。保健所や医療機関の負担を軽減し、限られた医療資源を重症化リスクがある人に集中させる狙いがある。一方でみなし陽性といっても、自治体で対応が異なり、どんな人が対象になるのか分かりにくい。現状と課題をまとめた。
コロナ診療をめぐり政府はこれまで「受診、検査」を原則としていた。発熱などの症状があれば、医療機関を受診したうえでPCR検査を実施。陽性と診断されれば、主には保健所とやりとりをしたうえで、入院や自宅療養などが始まるという流れだった。
しかしオミクロン株による感染急拡大で、検査を担う入り口の外来診療がパンクしかねない状況に陥り、「方針転換」を余儀なくされた。厚生労働省は1月24日、主に3つの指針を示した。
受診・検査に時間を要する地域では、①症状があって重症化リスクの低い人は、自主的な抗原検査で陽性となれば受診のみで感染者とみなせる②陽性者の同居家族など濃厚接触者に発熱などの症状があれば、検査をせず、医師の判断で感染者とみなせる。
③外来医療の逼迫(ひっぱく)で受診できない場合、症状が軽くて重症化リスクが低い人は自ら検査したうえで、医師が配置された自治体の「健康フォローアップセンター」への連絡を条件に感染者とみなせる。
苦肉の策として導入されたみなし陽性だが、実際に運用するかどうかは自治体が判断する。
大阪府は「リスクの高い人を取りこぼさない」(吉村洋文知事)として1月31日から導入。府の担当者は「発熱外来や検査依頼が殺到している医療現場の負担軽減につながれば」と期待を込める。東京都や福岡県なども同様の制度を導入している。
運用を見送った自治体もある。「本来はきちんと検査するのが望ましい。対応に疑問はある」とするのは大分県の担当者。適用のタイミングについては「医療現場の逼迫や検査キット不足が深刻化したときなど、やむを得ない場合になる」と説明する。愛媛県の担当者も「今は必要な検査ができない状況にない」として、現時点での運用に否定的な考えだ。
みなし陽性を適切に運用するためには、抗原検査キットの普及が大前提になる。ただ「第6波」による需要急増で全国的な品薄状態が続く。
大阪府東大阪市の新石切薬局では、最後にキットを入荷したのは1月下旬。担当者は「買いたいという人は来るが、医療機関が優先で当分入荷はない。府内のドラッグストアでも同じような状況だと思う」と懸念する。
現場の窮状は緩和されるのか。豊中市保健所(大阪府)の担当者は「制度が浸透しておらず、医療機関や患者から『みなし陽性者に該当するのか』と問い合わせが殺到している」と嘆く。みなし陽性者として自宅療養を続ける中で容体が急変するリスクもある。担当者は「入院調整が必要な患者を確実に拾い上げられるのか心配だ」とこぼした。
受診希望者からの電話が鳴りやまない大阪市北区のあらきクリニック。荒木克哉院長はみなし陽性について、「社会経済を動かすという意味ではいいのかもしれない」と理解を示す。一方で医師の視点から制度の難しさも感じるという。
荒木院長は「(濃厚接触者で症状があるなどの)『状況証拠』だけで陽性とみなせといわれても、行政側から責任を押し付けられているように感じる」としている。(小川原咲、桑村大)