◆「希望の塾」から4年半後、新たな政治塾を立ち上げ
小池百合子知事が国政転身に向けて再び動き始めた。特別顧問を務める「都民ファーストの会」が創設した「ファースト政経塾」が1月29日にスタート。コロナ感染拡大でリモートの講義となったものの、側近中の側近である荒木千陽・都民ファーストの会代表が「2022年を 東京大改革を日本大改革にする元年としたい」と切り出した後、初回講師の小池氏が登場。改革を担う人材育成の重要性を訴えた。今夏の参院選などに向けて小池チルドレンを擁立、自らも国政転身をしようという意気込みが伝わってきたのだ。
「小池劇場再び?」(2021年12月16日の『東京スポーツ』記事)とも報じられた「ファースト政経塾」は、入塾者は113名で、今年5月までに計5回が開かれる予定だ。2016年10月に設立された「希望の塾」と瓜二つで、「小池氏がかかわる政治塾というと『希望の塾』があったが、来夏の参院選では再び小池劇場が開幕するのか」(同)と指摘したのはこのためだ。
第2回の講師は、若手選挙プランナーの松田馨氏。自民党を歴史的惨敗に追い込んだ2017年7月の都議選でも都民ファースト候補を指南、この勢いを買って小池知事は同年9月に「希望の党」を設立して代表にもなったが、「排除」発言で失速、女性初の総理大臣の夢は頓挫した。しかし4年半後、新たな政治塾を立ち上げて再チャレンジを始めたように見えるのだ。
約2時間の政経塾は冒頭のみの公開で、隣室で都民ファースト代表代行の伊藤悠都議が補足説明。「(都民ファースト以外の)区議も複数参加している」「政経塾を通じて参院選に出たい方が現れることは当初から期待していた」などと述べた。
◆小池知事は参議院選挙から総理大臣を目指すのか
筆者は質疑応答で「参院選で最大何人出したいのか。小池知事は出る可能性はあるのか」と聞いたが、伊藤氏は「小池知事が出る可能性はこのセミナー(政経塾)においてはもう1回ぐらいあり得ると思いますが、参院選にどういう形で何人立てていくのかについては、今日は答えるのを控えたい」と具体的な回答を避けた。
7月で70歳となる小池知事にとって今夏の参院選は、国政転身の残り少ないチャンスといえる。そんな政治家人生最後の大勝負に向けて本格的に動き出した気持ちも分からないではないが、今はコロナ第六波の感染拡大中だ。
そこで筆者は小池知事に対して、1月14日の会見で次のような声掛け質問を行った。
「感染拡大中に国政転身の準備か。都民ファと国民民主の合流、知事の指示、トップダウンでしょう。参院議員から今度は総理を目指すのですか」
小池知事は無言のまま退出した。
著書『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』で紹介した通り、2017年9月29日の会見で「排除」発言を引き出して以降、筆者は4年以上も質問者として指されない“記者排除”を受け続けている。新年初の会見が開かれた1月7日には「知事、明けましておめでとうございます。今年はたまには指してください」と声をかけたが、2022年になっても小池知事の差別的対応に変わりはなかったのだ。
◆米軍基地由来の「第六波」対策は“やっている感”だけ!?
ちなみに都民ファーストと国民民主党が急接近をしたのは、去年12月17日。この日、都内で都民ファーストの都議と国民民主党の国会議員が参加する勉強会が開かれて、荒木代表と玉木雄一郎代表が挨拶。その後の囲み取材で荒木代表は、参院選で都民ファーストの会が候補を擁立することや、政経塾を開講して小池知事が初回講師を務めることも発表していた。 小池劇場再開シナリオに沿った動きが昨年末からスタートしていたのだ。
もちろん都知事の職務を全うしながら国政転身の準備をするのなら文句を言うつもりはないが、実際には本業の都知事としてのコロナ対策をおろそかにしているとしか見えないのだ。そこで、1月7日の都知事会見では次のような声かけ質問をした。
「(1月6日の面談で)岸田さんに日米地位協定の改定を申入れなかったのですか。岸田さん、(同日の囲みで改訂を)否定していますよ。ちゃんと申し入れたのか。元防衛大臣とは思えない、ズサンな甘い対応ではないか。ちゃんと物を言ってくださいよ、岸田さんに。忖度なのですか」
小池知事はこの時も無言のまま退出した。
日米地位協定の改定について聞いたのは、今回の第六波が米軍基地由来である可能性が高いからだ。しかもこの日の会見で小池知事は、日米地位協定見直し(改定)を求めてきたと次のように答えていたのだ。
新宿新聞「小池都知事は、オミクロン株が流行る前には『水際作戦が大事だ』ということを言っていました。今回、蓋開けてみたら、米軍のところでバケツの開いた水で、PCR検査をしないまま日本に直接入国している軍人たちが、今の沖縄とか岩国を中心に、オミクロン株が猛威を奮っている。東京も横田基地という米軍基地を抱えて、小池都知事としても申し入れをしたと思うが、今までの何が不十分で、何を変えたら、この米軍の問題については解決するのかと考えているのか」
小池知事「昨日、岸田総理のもとに5点申し入れをした。その中に、横田基地を抱えている東京都としての要望を出した。(中略)日米地位協定については、都として、以前から『国内法の適用がないことなど我が国にとりまして依然として十分とはいえない状況である』という点については、他の自治体とも連携して見直しを国に求めてきた」
これを聞いて「“やっている感”の演出」「単なるパフォーマンス」にしか思えなかった。
◆政府への要望書には「日米地位協定の改定」は入らず
6日の小池知事面談を終えた岸田首相は「日米地位協定の改定は考えていない」との考えを示した。6日夜の『毎日新聞』が「岸田首相『日米地位協定改定せず』 在日米軍のコロナ対策で」と銘打って報じたが、結局、小池知事の地位協定見直し(改定)の申し入れは右から左へと聞き流されていたのだ。
本来なら小池知事は要望書を出す際、改定否定の岸田首相に対して必要性を訴えるなどの方針変更を迫っていないとおかしい。しかし実際には、考えの違う岸田首相との議論内容についてはまったく紹介していない。形だけの申し入れをしていただけなのだ。会見終了直後の声掛けで筆者が「ちゃんと申し入れたのですか」と叫んだのはこのためだ。
1月7日は定例会見だけでなく、一都三県知事とのリモート会議の後、二度目の都知事会見が開かれた。この知事会議では、政府に提出予定の要望書案についても議論されたが、その中には日米地位協定の見直しに関する文言は入っていなかった。そこで会見終了直後、再び「岸田さんに地位協定の見直しを言ったのですか」と声をかけたが、ここでも小池知事は一言も発することなく会見場を後にした。
岸田首相と面談をしたり、一都三県知事で政府提出用の要望書を取りまとめたりなど「“やっている”感演出」には熱心な小池知事だが、第六波感染拡大を招いた「水際対策の抜け穴」をふさぐ日米地位協定改定には不熱心としか言いようがない。ここでも「自分ファースト・都民(本業)二の次」という政治姿勢が貫かれている。
去年夏に過労入院をしたこともあって発信力に陰りが見えた小池知事だが、今回の政治塾創設で再び本格始動モードに入ったようだ。夏の参院選に向けて精力的に動いていくのは確実な小池知事から目が離せない。
文・写真/横田一
【横田 一】
ジャーナリスト。『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数