学校と保護者、コロナ禍ですれ違う情報伝達

新型コロナウイルスのオミクロン株への感染が子供に広がる中、学校と保護者の間で情報伝達のあり方に齟齬(そご)が生じている。学校にまつわる感染状況は家庭に通知されるが、詳細を明らかにすることで感染者に対する差別や偏見を助長する恐れもあるため、内容が限定される場合がほとんど。一方、断片的な情報が保護者の対応を難しくしている側面もあり、プライバシー保護と情報開示のバランスが課題となる。(玉崎栄次)
内容乏しく
《本校関係者の感染が確認されました》
横浜市に住む女性(36)は小学1年の長男(7)が通う市立小から受け取った学級閉鎖を伝えるメールに首をかしげた。伝えられたのは閉鎖となる学級とその期間だけ。感染者は児童なのか、その家族なのか。それとも教員なのか。メールからは読み取れない。感染者数も不明だ。
女性は「不安をあおるだけになっているのが怖い」と語る。とはいえ、理解もできる。「自分の子供が感染したら全校メールで発信されるのも嫌だし、仕方ないのかな…」
学校からの通知の内容が乏しく、対応を決めかねている家庭もある。東京都内のある公立小では、1月中旬ごろから児童の感染が増え始め、2月第1週末時点で22人が陽性となった。
小5の長女(11)がいる女性(47)に学校から届くメールには、こうした感染者数以外に「濃厚接触者はいない」「感染した児童への差別がないように」などとあるだけで「感染者の出た学年やクラスは知らされず、誰がどう濃厚接触に関する調査をしたかも分からない」という。
さらに感染が広がり、休校や学級・学年閉鎖になれば、自身の仕事のシフト変更を余儀なくされる。しかし、限られた情報をもとに職場での調整を進めていいものか。女性は「個人情報などに気を使う学校側の立場も分かるが、現状では生活の見通しがつきにくい」と気をもむ。
「合意形成を」
東京都が9日に発表した10代以下の感染者数は5262人。1月17日に818人だったが、2月2日には約7倍の5758人にまで急増した。オミクロン株の感染の主流が高齢者と子供に移行しているとされ、学校から保護者へのメールの頻度も増している。
江戸川区教育委員会によると、学級閉鎖などは教委で決めるが、保護者にどこまで情報を開示するかは、感染状況が学校ごとに異なるため各校の判断に委ねられているという。区教委の担当者は「詳しく知りたいという保護者の気持ちは分かる。できる範囲で、できる限りスピーディーに伝えたいが、満額回答が難しいなかで葛藤もある」と苦心を明かす。
「集団生活では感染経路の特定は難しい。低学年では、休み時間など教室や廊下のどこで誰と接触したかなどを追跡するのは限界がある」。都内の公立小で低学年を担任する女性教員(38)は、学校側でも正確な情報の把握が困難である実情を説明した。
日本大危機管理学部の福田充教授(リスクコミュニケーション)は「新型コロナには誰がかかってもおかしくない。季節性インフルエンザのように、感染者を特別視することなく、社会で受け入れることが可能なリスクとして合意形成を図ることが必要だ」と語る。
その上で、福田教授は学校と保護者の双方が情報開示の線引きを共有する話し合いの場を設けることを提案。「コロナと一定の共生が必要となる以上、生活を日常へと向かわせるための出口戦略を描く時期に来ている」と指摘している。