北海道旭川市で2021年3月、中学2年だった広瀬爽彩(さあや)さん(当時14歳)が失踪後に遺体で見つかった問題で、スクールカウンセラーを務める新潟青陵大の碓井真史教授(社会心理学)に失踪前後の心理状況や学校側がとるべきだった対応などについて聞いた。【聞き手・谷口拓未】
広瀬さんが昨年2月13日に自宅を出た後の状況は、中学入学後の2年間に苦しんだ人生の縮図のように感じます。歩いていた時に通行人とすれ違うこともあったはずですが、SOSは見逃され、亡くなりました。その日に至るまでも同様に、助けてもらえる状況はあった。しかし、救うことができなかったのです。
真冬の旭川。いくら悩んでいたとしても、コートくらいは着ていいはずですが、そういうことも考えられない状態だったのでしょう。非常に不安定な状態で一歩を踏み出し、歩きながらいろいろなことを考え、段々と家が遠くなった時に、帰宅する気力を失ったのかもしれません。途中のお店にでも入って温まり、泣いて助けを求めれば、誰かがその日は手を差し伸べたでしょうが、そうする力はなかった。精神的にかなり追い詰められていたことが推察されます。
いじめを受けると、心が奴隷状態になり、逃げられなくなることがある。マインドコントロールに近く、そんなことが起きていた気がします。広瀬さんはSNS(ネット交流サービス)などで、自身の思いを吐露していました。家族や身近な友人など、関係が深いからこそ言えないこともあります。いじめを受けていることが恥ずかしいという感覚を持ち、周囲になかなか相談できないということがあるからです。
元気で健康的な自分を見せたいのに、できずに情けない。弱い人間であることを知られたくない。そういった意識が働くことがあります。家族など身近な人に心配をかけたくないという人は、子どもでも大人でも珍しくありません。知ってほしくないけれど、知ってもらいたいという気持ちがあります。私はスクールカウンセラーをしていますが、子どもが先生方よりも遠い距離にいる私に、悩んでいることを話せるということもあります。ネット上にも距離は遠くとも、共感してくれる人がいます。
学校側の対応の詳しい経緯は分かりませんが、いじめの問題には「今日」対応するのが原則。様子を見ようとなると、子どもは見捨てられたと感じます。精神科で治療を受けている子がいたら全力でやる。そんなことは当然です。担任や主任の教員、それでもダメなら教頭や校長が、しっかりと対応しなければなりません。
教育的にはいじめの加害者に対する教育が必要で、その子たちも守らなければいけません。ただし、人権問題としては圧倒的に被害者を守らねばなりません。根本的な解決に時間がかかるとしても、被害を受けている状況を止めることはできます。まずは動くことが大切だったのです。家族も一生懸命に学校に働きかけましたが、悲惨な結果となってしまいました。なぜ起こってしまったのか。検証し、考えなければなりません。
いじめなどの相談窓口
・24時間子供SOSダイヤル=0120・0・78310(なやみ言おう)、年中無休、24時間
・児童相談所全国共通ダイヤル=189(いち早く)、年中無休、24時間
・子どもの人権110番=0120・007・110、平日午前8時半~午後5時15分
・チャイルドライン=0120・99・7777、毎日午後4~9時(18歳まで)