大阪・北新地の心療内科クリニックで25人が犠牲になった放火殺人事件で、弁護士らでつくる「犯罪被害補償を求める会」(神戸市)は14日、事件の被害者遺族の多くが十分な補償を受けられない恐れがあるとして、国に支援の拡充を求める要請書を送付し、遺族2人のコメントを公表した。
同会は、被害者遺族らに国が支給する「犯罪被害者給付金」の拡充を求める活動をしている。同会によると、給付金は生前の収入などに基づいて算出され、多くが休職中だった北新地事件の被害者の遺族には十分な額が給付されない可能性があるという。
遺族のコメントは匿名で公表された。いずれも夫を亡くした女性で、うち1人の夫は正社員として働いていたが、生きづらさを感じて現場のクリニックを受診し、その後退職して、職場復帰を目指す「リワークプログラム」に参加していた。
女性は「わたしたちは、自身の病気や特性と向き合う姿に寄り添い、応援していた」と家族の思いを説明。事件直前、夫から「どんなふうに働くか具体的な道筋が見えてきた」と言われていたといい、「復職して、育児もして、子どもの成長を見守る日々があったと思う」と無念をつづった。
女性は、夫なしで子どもを育てる経済面の不安も記し、「復職を目指していた人も『無職』とひとくくりにするのは、尊厳を傷つける」とし、給付金の算定基準の改善を求めた。
もう1人の女性は「大切な人が悪意を持った人間によって、思い描いていた未来ごと殺された」とし、「きっと一生喪失感は消えない。いつまでも苦しみから解放されることはない」とつらい心情を訴えた。