「謝る以外何もできない」 工場火災で三幸製菓が従業員に説明

新潟県村上市長政の米菓製造大手「三幸製菓」荒川工場で11日深夜に発生した火災で、同社は14日、同工場の従業員を対象にした説明を行った。出火原因については「現時点で不明」とし、出席者は犠牲者に黙とうをささげたという。一方、県警はこの日、焼け跡から新たに1人の遺体を発見したと発表。火災による死者は6人となった。【内田帆ノ佳、北村秀徳】
荒川工場にはこの日、会社側の説明を聞くため、多くの従業員が出社した。複数の従業員によると、約100人が出席し、耳を傾けた。説明を担当した社員は「謝る以外に言い訳も弁解も何もできません」と述べ、出火原因について「どうして出火したのかまだ分かっていない。詳しいことが分かり次第話す」と報告したという。
アルバイト従業員の女性(74)によると、社員は亡くなった人たちの名前を読み上げる際に声を詰まらせていた。女性は「出席者は固唾(かたず)をのんで見守っていた。何か言葉をかけたり、泣いたりすることはなく、皆、我慢していたのだと思う。亡くなった方々はかわいそうで声が出ない」と話した。
火災では、清掃担当のアルバイト従業員だった渡辺芳子さん(71)=村上市長政▽伊藤美代子さん(68)=胎内市下館▽近ハチヱさん(73)=同市東牧▽斎藤慶子さん(70)=同市土作の女性4人が死亡した。他に製造担当の従業員だった20代男性2人が安否不明となっている。
現場は煎餅などを製造する「F棟」(鉄筋コンクリート一部2階建て、約9859平方メートル)で、外壁などを残し全焼した。出火当時、隣の「E棟」にいたアルバイト従業員の男性(55)は「閉まりかかった防火シャッターの下半分からF棟の中が見えた。火の海で真っ赤だった」と話す。
この男性によると、E棟で煎餅の味付け機や床の清掃をしていると突然、火災報知機が鳴りビニールが溶けたような匂いがした。直後に停電も発生。建物内は多数の機械があるため通路のほとんどが台車1台が通れるほどの狭さで、暗闇の中で身動きがとれなくなったという。男性は「『ここだ、こっちから出られる』という声を頼りに手探りで出口にたどり着いた」と緊迫した状況を振り返った。
工場には亡くなった人たちに花を手向ける人も相次いだ。従業員の30代女性は「巻き込まれた人たちを思うと心苦しい。(会社側は)最近、防災訓練や避難放送などで安全管理に力を入れているようだったが、火災が起きてしまい、とても残念だ」と話した。
工場周辺では社員が企業などを訪問し、お詫びをして回る姿もあった。この社員は取材に「私たちの口から何も言えないが、ご迷惑をおかけして申し訳なく、おわび申し上げる」と言葉少なだった。
同社ホームページによると、14日時点で荒川工場を含むすべての工場が安全確認のため生産を停止している。
過去にも8件の火災
村上市消防本部によると、荒川工場では1988年7月~2019年11月、8件の火災が確認されている。部分焼が4件、ぼやが4件で、けが人はいなかったという。
2019年11月の火災は「E棟」で発生。煎餅の乾燥機と焼き窯の上部に堆積(たいせき)した菓子くずがガスバーナーの輻射熱(ふくしゃねつ)で炭化。発火点に達して焼けたことが原因だった。
同消防本部が20年9月に実施した定期立ち入り検査では、自動火災報知設備の感知不作動、誘導灯の作動不良などの不備が見つかった。これを受けて工場側は、補修や取り換えなどをしたとする改修報告書を提出した。
過去の8件は今回火災が起きた「F棟」とは別の建物で発生し、ほとんどが煎餅の生産工程で生地を乾燥させる機械に堆積(たいせき)した菓子くずから発火したとみられる。一方、同消防本部によると、今回の火災を巡っては一部の従業員が「炭化した菓子のかすから出火した」と証言しているという。
県警、消防が実況見分と捜索
県警と消防は14日、火災現場の実況見分と安否不明者の捜索をし、新たに身元不明の1人の遺体を発見した。火災による死者は計6人となった。
火災では、製造担当の従業員だった20代男性2人の安否が不明となっており、新たに発見された遺体と、12日に発見された別の遺体はこの男性2人とみられる。いずれも建物南西側のボイラー室付近で見つかった。この他、清掃担当のアルバイト従業員だった女性4人が死亡し、いずれも煙を吸ったとみられ、焼死と判明した。
県警と消防は15日も引き続き、実況見分を行い、出火原因などを調べる。また、新潟労働局と総務省消防庁の職員も調査のため火災現場を視察した。