「6代目山口組組長・司忍は引退。7代目には若頭の高山」 SNSで“山口組怪文書”が流布した「ある理由」 警察当局の情報収集の結果は…?

国内最大の暴力団、6代目山口組が分裂して8年目を迎えた。6代目と神戸山口組との対立抗争状態は2022年に入ってもいまだ続いている。
そんな中、年明け直前の2021年末、関係者の間である怪情報が飛び交った。
6代目山口組組長の司忍が、2022年1月25日に80歳の誕生日を迎えるにあたり、「引退する」というのだ。SNS時代のある種の「怪文書」として受け止められていたが、情報拡散が止まらず、警察当局も真偽の確認に走る事態となった。

多くの人の目に留まった「怪文書」
「1月25日の6代目の誕生日は80歳の傘寿で、その日に6代目の引退発表と、高山7代目の発表――」
そんな書き出しで始まる文書が、昨年12月中旬にSNSで広く出回った。その怪文書は6代目山口組の関係者ら暴力団業界だけにとどまらず、多くの人の目に留まることになった。
さらに文書では、「引退発表」に続き、「7代目の人事は若頭――」と、現在の6代目山口組の執行部を構成する若頭補佐ら最高幹部の実名が記載され、7代目体制発足の新体制の人事についても触れていた。
警察当局による事実確認の結果は…?
このほかにも、6代目山口組の中核組織・弘道会傘下の最高幹部が、本体である6代目山口組の直系組長である「直参に昇格」とも書き込まれていた。
文書の意図するところは、組長の司が引退し、組織のナンバー2である若頭・高山清司が跡を継いで7代目組長に就任するということだった。新体制の若頭には弘道会会長の竹内照明が就任すると記載されていた。竹内はすでに6代目山口組では若頭補佐といった最高幹部に就いているうえ、司と高山はともに弘道会出身。そのため、暴力団業界の捉え方としては順当な人事とも言えた。
6代目山口組組長の司は80歳となり、傘寿を迎える高齢者であることは間違いない。高山は若頭とはいえ今年75歳になる。組長の座を譲ることも全く否定できないため、警察当局も事実関係の確認を進めたという。
その結果、「ガセだと判断」との結論に至った。
80歳だろうが「引退することはない」
長らく巨大組織の分裂に伴う抗争状態が継続しているという経緯を踏まえ、警察当局の幹部は今回の“怪情報”の背景についてこう分析する。
「6代目(組長の司)が引退して、7代目の座を高山に譲るということは現段階ではありえないだろう。ここ数年の情勢では6代目(山口組)側の方が優勢とはいえ、神戸(山口組)との抗争は決着した訳では全くない。ここで6代目が引退して下りたとなれば、神戸側の存在を認めたことになりかねない。それは考えられない」
組織犯罪対策を長く担ってきた別の警察当局の幹部も同様の見解を示す。
「大正時代に創立した山口組は100年の歴史がある。これまでも分裂や内部での対立などがあったが、6代目は自分が組長であるときに神戸側が勝手に出て行き、組織分裂となってしまった。分裂という事態は許しがたいし、到底、神戸側を認める訳には行かない。引退してしまえば歴史の汚点になってしまう。80歳だろうが高齢だろうが、引退することはないだろう」
結局、司が組長の座を譲ることはなかった
一方で、6代目山口組の分裂の動向を注視している指定暴力団幹部は、警察当局とは別の視点から指摘する。
「6代目側への移籍が続き神戸側の勢力は数年前から大きく減っている。『6代目が引退する』などといった不確かな情報を流すことによって、得をする人物がいるということだ。普通に考えれば神戸側の可能性が高いだろうが、6代目側の内部からという可能性もゼロではないのではないか」
そうして迎えた1月25日。警察当局の幹部や暴力団関係者たちの見立て通り、誕生日を迎えたことで司が組長の座を譲ることはなく、7代目へと代替わりすることもなかった。
一般市民が巻き添えになることが最大の懸念
ただ、警察当局が問題視するのは、司が体面を保って引退できるように6代目が神戸側への攻勢をさらに強め、さらなる対立抗争事件が発生する事態が引き起こされる可能性があるということだ。
司の誕生日を目前にした2022年1月17日には、水戸市にある6代目山口組系傘下組織の事務所に男が訪れ、応対した幹部に向けて拳銃を発砲。撃たれた幹部はその後、死亡が確認された。
警察当局の幹部は発生後、「事件の詳細は不明だ。移籍をめぐるトラブルがあったとの情報はある。ただ断定はできない」との見解を示していた。この事件は事務所内で発生していたが、懸念するのは人々の往来がある繁華街などでの発砲事件が発生し、一般市民が巻き添えになることだ。
2019年11月に神戸山口組幹部の古川恵一が射殺された事件は、多くの買い物客らが行きかう尼崎市の商店街で発生した。6代目山口組系の元組員は殺傷能力の高い自動小銃で数十発の銃弾を発射していた。
抗争に市民が巻き込まれる危険性もかなり高かった
さらに、容疑者は自動小銃を所持したまま京都市に車で逃走していた。
京都に向かったのは逃走ではなく、神戸山口組系の別の組織の襲撃が目的だった。京都市内で緊急配備の京都府警のパトカーに停止させられた際にも、車を降りて警察官に銃を向けて抵抗する姿勢を見せている。
その後は警察によって取り押さえられたが、当時組織犯罪対策を担当していた警察当局の幹部は「身柄を押さえる際も非常に危険な状態だった」と振り返る。
「現場周辺の道路は車が渋滞していたほか、歩道上には多くの一般市民の通行人がいた。この時は容疑者があきらめて投降したが、警察官に向けて発砲した銃弾が流れ弾となって市民に命中するといった危険性はかなり高かった」
水戸市内の殺人事件も動機や背景はまだ明らかになっていない。だが、警察当局の幹部は、「いずれにしても6代目山口組の分裂に端を発した事件であることは間違いない」としている。(文中敬称略)
「すべては高山次第だ」 8年目に突入の山口組分裂抗争 6代目 vs. 神戸の決着へキーマンの次の一手は…? へ続く
(尾島 正洋/Webオリジナル(特集班))