日本復喝! 進次郎前環境相はなぜ発信しないのか 元首相5人のEU書簡問題 風評被害の払拭、官民挙げての取り組みを踏みにじるも

暇にあかせて風評被害をあおるなど、もってのほかである。それも歴代の首相経験者5人が旗を振っているのだから、開いた口がふさがらない。小泉純一郎、菅直人、細川護熙、村山富市、鳩山由紀夫各氏のことだ。
元首相5人は、欧州連合(EU)行政を担う欧州委員会に宛てた「脱原発」を求めた書簡で、東京電力福島第1原発事故の影響について「多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみ」と記載した。
福島県の県民健康調査検討委員会や、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)は、(事故当時の)子供たちの甲状腺がんについて、放射線被爆(ひばく)との関連は認められないとの趣旨の見解を示している。
このため、環境省は「不適切」とし、福島県の内堀雅雄知事は「遺憾」とした。甲状腺がんの子供たちの闘病を思うと胸が痛む。だが、それとこれとは別である。
自らの責任で原発事故との因果関係を立証もせず、科学的知見に基づかないまま、あたかも原発事故が原因で病気になったと決めつけるような物言いは「不適切」であり、政府や福島県が怒るのも当然である。
被災地や子供たちへの不当な差別や偏見を招きかねないことが分からないのか。特に、福島県は事故後、風評被害の払拭に官民挙げて取り組んできた。その努力を踏みにじるものである。
山口壮環境相の抗議に対し、元首相5人は「脱原発」運動に取り組む市民団体を通じて、「この10年で266人に甲状腺がんが発症した原因は何だと主張・立証するのか」などと、逆抗議・逆質問をしている。
これについて、環境省は10日、ホームページ上に文書を公開し、「国内外の専門家会議により、現時点では放射線の影響とは考えにくいという評価がされている」としたうえで、国連科学委員会の報告書などのURLを参考に添付した。
文書はまた、「福島県の子供たちの気持ちに寄り添うべく、放射線の健康影響に関する差別・偏見の払拭に取り組むとともに、甲状腺検査の対象者やご家族の多様な不安に応えるため、心のサポート体制を強化していきたい」としている。
「反原発」「脱原発」を掲げるのは勝手だが、現時点で断定的に語る元首相5人の振る舞いはあまりに軽率ではないか。国会は5人を招致して事情をただすべきである。
コロナ禍への政府の対応など、他にも審議することが山積しており、5人に時間を割くのももったいないが、それほど、この問題は深刻なのだ。
小泉氏の次男、小泉進次郎氏は前環境相だ。復興を目指す福島県の風評被害の撲滅に汗をかいてきたのではなかったか。菅氏は現職国会議員で、立憲民主党の最高顧問だ。
進次郎氏も、立憲民主党も、自らの見解についてもっと明確な発信をすべきである。
■佐々木類(ささき・るい) 1964年、東京都生まれ。89年、産経新聞入社。警視庁で汚職事件などを担当後、政治部で首相官邸、自民党など各キャップを歴任。この間、米バンダービルト大学公共政策研究所で客員研究員。2010年にワシントン支局長、九州総局長を経て、現在、論説副委員長。沖縄・尖閣諸島への上陸や、2度の訪朝など現場主義を貫く。主な著書に『チャイニーズ・ジャパン』(ハート出版=表紙)、『日本が消える日』(同)、『日本復喝!』(同)など。