昨年、神奈川県内での交通事故による死者数は142人を数え、全国の都道府県で史上初めて最多を記録した。他の自治体のなかには人口に対する死者数の割合がさらに高いところもあるが、さすがに「全国ワースト1」のイメージがもたらす影響は大きかった。同県警は事故発生の背景に何があったのか分析するとともに、今年に入って各種取り組みを強化している。
警察庁の統計によると、令和3年の交通事故による全国の死者数は前年比203人減の2636人で、統計が残る昭和23年以降で最少を更新した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、各地で複数回にわたり、外出自粛を呼び掛ける緊急事態宣言や蔓延(まんえん)防止等重点措置が行われた影響も大きかったとみられている。
歩行者側の違反も
全国的にこうした減少傾向がみられるなか、県内での死者数は一昨年の140人を上回る142人を記録。昨年は年末が近づくにつれて複数の県警関係者から異口同音に「このままでは…」という声が聞かれたが、悪い予感は的中し、史上初めて47都道府県で最多となってしまった。
県警交通総務課の担当者によると、142人のうち歩行中に亡くなった人の数が50人(35・2%)と最も多く、そのうちの半数には「横断歩道を使わずに道路を渡る」「駐車車両の影からの飛び出し」など、歩行者自身による何らかの違反行為があったという。「歩行者一人一人が交通ルールを順守していただければ、死者数は大幅に減少させられる」と前出の担当者は語る。
次いで多いのがオートバイ、ミニバイクなどの二輪車に乗車中の事故死者で、47人(33・1%)。交差点内での右左折中に車両と衝突する事故で亡くなるケースが特に目立ち、47人中19人と4割余りを占めた。
全体の死者142人の中で65歳以上の高齢者の数は前年から9人増の65人となり、全体の45・8%だった。
特別な解決方法なく
もっとも、この142人という数字は確かに深刻であることは間違いないのだが、同じく警察庁が発表している各都道府県の人口10万人当たりの死者数に目を向けると、印象は少々変わる。本県のそれが1・54人なのに対して全国平均は2・09人。普段の生活で公共交通機関よりも車に頼る割合が高いとみられる自治体の中には、3・0人以上のところも10以上あった。
黒岩祐治知事は年頭の定例記者会見で、交通事故死者数について問われると「人口10万人当たりの死者数でみると、本県は少ない方から数えて(全国で)3番目」と指摘している。ただ、そうはいってもワースト1の負のイメージは強烈で、最後は「しかし、142人もの尊い命が失われたことは、大変重く受け止めている」と沈痛な表情で締めくくった。
県警交通総務課の担当者は「事故を未然に防ぐのに、特別な方法はない。啓発活動や、交通取り締まりの強化に引き続き力を入れているところだ」と言葉をつなぐ。今年に入ってからの交通事故による県内の死者数は22日午前0時時点で18人で、前年比同。令和4年は汚名返上なるか。