「エセ関西弁」? 独学で調査 岐阜・大垣の方言を研究、自費出版

「中途半端なエセ関西弁」――。そう指摘されることもある岐阜県大垣市付近の方言についての研究結果を、名古屋市の会社員、杉崎好洋さん(61)が著書にまとめた。会社勤めの傍ら、地元老人クラブのメンバーらに聞き取り調査し、アクセントや文法体系を記している。約30年に及ぶ研究の集大成でもあり、「何十年か後、方言に興味を持った人の役に立てたらうれしい」と話す。【井上知大】
著書のタイトルは「岐阜県大垣市赤坂方言の記述的研究」。大垣市赤坂町は杉崎さんの出身地だ。1980年代後半に、自身の祖父母から学んだ語彙(ごい)や文法についても記載した。方言研究は、伝統的な言葉を話す高齢者への聞き取りが中心だが、2020年以降、新型コロナウイルスの影響で現地調査の中止が相次ぐ。在宅時間が増えたのを機に「これまでの研究を1冊の本にまとめよう」と思い立ち、21年4月に自費出版した。
地元の方言に興味を持ったのは愛知大生だった20代の頃。同級生から「けんかしているみたい」と指摘され、自分の話す方言を客観視するようになった。言語学にひかれたものの、研究者にはならず、卒業後は食材卸業の会社に就職した。
30歳を過ぎたある日、新聞のイベント情報欄で見た、大学教授らが集う「名古屋・方言研究会」の発表会に参加。そこで知り合った学者たちからアドバイスを受け、独学で調査をスタートした。1990年代~2000年代にかけて、ほぼ年に1度のペースで約10年同会の会報に論文を発表した。著書は、そのときの論文などを集め、加筆したものだ。
大垣周辺など岐阜県内の方言は、他県出身者から「変なイントネーション」「無理にまねした関西弁みたい」と言われる。著書では、大垣方言に絞りその特色を解説。歴史的背景を踏まえながら「文法は関西地方に近く、アクセントは関東地方に近いためだ」と考察する。著書の出来栄えは「『こんな本が欲しかった』と自分で思える仕上がりになった」とほほを緩ませる。
次作の準備も進めている。大垣市から滋賀県彦根市にかけて伊吹山周辺の方言がどのように変化しているのかを調査しており、22年4月の出版を目指す。「方言研究はライフワーク。大垣だけでなく、もっと範囲を広げて比較した調査を深めたい」と意気込む。
著書は、税込み2310円。「アマゾン」などの通販サイトで購入できるほか、岐阜県図書館、大垣市図書館で読むことができる。
杉崎好洋(すぎさき・よしひろ)さん
1960年、赤坂町(現・大垣市)生まれ。県立大垣東高校を経て愛知大学法経学部卒業。方言研究のほか、城郭巡り、バリトンサックス演奏が趣味。