「無事でいて」 ウクライナを愛するバイオリニスト、侵攻に憤り

ロシア軍のウクライナへの侵攻に、神奈川県内の関係者も心を痛めている。バイオリニストで日本ウクライナ芸術協会代表の沢田智恵さん=横浜市青葉区=はモスクワで音楽を学び、帰国後にウクライナの魅力にとりつかれて頻繁に訪れるようになった。ウクライナの友人も多く、「無事でいてほしい」と祈る気持ちで戦況を見つめている。
広島県出身の沢田さんは、東京都立川市の国立音楽大を卒業後、バイオリンを続けるかどうか悩んだ末に「最後にもう一度、真剣に学んでみよう」と、2007年にモスクワのロシア国立グネーシン音楽院に留学した。世界各国の俊英が集まる名門で現地の音楽に触れながら同級生らと腕を磨くうち、音楽にのめり込むようになった。
ウクライナとの出合いは留学から帰国して3年後の15年。同国出身で世界的バイオリニストのオレグ・クリサ氏のマスタークラス(公開レッスン)の通訳を務めたことがきっかけだった。生徒の演奏を1回でがらりと変えたその指導に感銘を受けた。クリサ氏以外にも多くのバイオリニストを生んできたウクライナという国そのものにひかれた。
毎年2~3回、ウクライナを訪れるようになり、現地でコンサートを開いた。18年には「日本ではあまり知られていないウクライナの魅力を伝えたい」と自ら日本ウクライナ芸術協会を設立。同国大使館のイベントに参加したり、横浜市と姉妹都市提携を結ぶオデッサ市との記念コンサートを開いたりしてその魅力を伝えてきた。20年には新型コロナウイルスと闘うウクライナの医療従事者の支援としてコンサート動画の配信をリターン(返礼)とするクラウドファンディングも実施。国際NGO「アドラウクライナ」を通し現金約100万円を寄付した。
沢田さんのウクライナ人の印象は「つつましくて優しい、いい人たちばかり」。一方でロシア人の国民性を「優しい面もあるが、一度やると決めたらやり通す頑固さがある」と評する。
双方に友人も多いため、侵攻の驚きや悲しみも人一倍強い。24日にはウクライナの首都キエフの友人に連絡を取り、状況を尋ねた。「現地はパニックで、ポーランドや他の国に疎開しようかと話している人もいる」という。罪のない国民に犠牲者が出ていることについて「それぞれに言い分はあると思うが、国民の生活、幸せが一番大切だということを指導者には考えてほしい」と憤る。
沢田さんは「何かできることを」と既に行動に移している。21年末に横浜市で開かれた横浜市とオデッサ市との姉妹都市提携55周年記念コンサートの動画を有料配信し、収益をウクライナの支援に充てられないか検討中という。
22年は日本とウクライナが国交を樹立してから30年の節目の年。「日本人とウクライナ人が共演するようなコンサートを開きたい」。沢田さんは、一刻も早く平和の調べを奏でる日が訪れることを願っている。【牧野大輔】