新型コロナウイルスワクチンの5~11歳への接種が3月から本格化するのを前に、自分の子供に接種させるかの判断で保護者が揺れている。保育所や学校でオミクロン株の感染が拡大する中、積極的な接種で安心感を得ようとする人もいれば、副反応の懸念から慎重姿勢の人も少なくない。現場の医師は科学的根拠のある情報をもとに決めることが重要と指摘する。
「正月明けから保育園で感染者が出るようになったので、早く接種した方が安心と考えた」。28日に5~11歳向けのワクチン接種を始めた東京都墨田区で、6歳の長男が接種を受けた会社員の橋本和哉さん(48)はこう語った。
同区の対象者は約1万3000人。この日は個別接種を行う同愛記念病院で39人が接種を受けた。診察室に入った親子に医師が名前と生年月日、接種に関する説明書に目を通したかを確認。「お父さんと手をつないで頑張ろうね」と看護師が声をかけ、医師が男児の左腕に素早く針を刺した。
子供の反応はまちまちだ。小学4年の田村瑛真(えま)さん(10)は「注射は好きじゃない」と顔をしかめつつ、「でもワクチンを打てばコロナにかかりづらくなると聞いたから、もっと遊べるようになるかな」と期待を込めた。
一方、接種後の副反応などを心配し、対応を決めかねている保護者も目立つ。小学2年の長女(8)と1年の長男(7)が接種対象となっている愛知県瀬戸市の男性会社員(32)は「すぐに打たせるのは怖い」と現時点では後ろ向きだ。「大人の自分でも副反応がかなり出た。子供に打って本当に大丈夫なのか不安なので、当分は様子を見たい」という。
小学4年の三男(10)を持つ東京都八王子市の農業の男性(52)は「高齢の母と同居しているので打たせたい気持ちもある」としながらも、「子供は感染しても重症化しづらいと聞く。もう少し情報収集してから決めたい」とためらいを見せた。
野村総合研究所が昨年10月に公表した子供のワクチン接種に関する意識調査によると、12歳未満の子供を持つ保護者1953人のうち、子供に接種させる意向なのは66・4%。25・6%が「あまり接種させたくない」で、「絶対に接種させない」と強い拒否感を示す人も8%いた。
家庭内で意見が分かれたケースもある。東京都新宿区の公務員の50代男性は小学1年の長女(7)の接種をめぐり、妻と口論になった。「安心して学校に通わせられる」と主張する妻に対し、男性は「周囲が打ち始めてからでも遅くはない」と反論。議論は平行線をたどり、近いうちに長女も交えて話し合って決める予定という。
同愛記念病院の平野美和(よしかず)院長は5~11歳の接種について、「国内には小児の重症例に対応できる施設はかなり少ない。児童の間で感染が広がっている今、接種需要に応えたい」と強調。接種を悩んでいる保護者には「インターネットなどの噂話に振り回されず、国や自治体の科学的根拠のある情報をもとに判断してほしい」と呼びかけた。
発症・重症化予防に期待
オミクロン株の蔓延(まんえん)で、10代や10歳未満の子供の感染者数の高止まりが続いている。保育所や学校でクラスター(感染者集団)が相次ぎ、家庭内感染で高齢者にうつすリスクもはらむ。ワクチンは発症や重症化を防ぐ効果が期待されるが、接種後に体調悪化の恐れもあり、配慮が求められる。
厚生労働省の集計データによると、2月13~19日の人口10万人当たりの累計新規感染者数は5~9歳が992・2人で、全年齢層で最も多い。次いで10~14歳の756・3人だった。10歳未満の約5割、10代の約4割が自宅で感染しており、それ以外では学校や保育所・幼稚園が目立つ。
5~11歳向けのワクチンは、米ファイザー製の小児用が使われる。12歳以上と同じく3週間間隔で2回接種するが、1回の成分量は3分の1。オミクロン株出現前の海外の治験では、2回接種後の発症予防効果は90・7%だった。
主な副反応は接種部位の痛みが1回目74・1%、2回目71%。38度以上の発熱は1回目2・5%、2回目6・5%だった。ごくまれに軽症の心筋炎を発症するが、米国での報告率は5~11歳の男子の方が12~17歳の男子よりも低かった。
(竹之内秀介)