ウクライナ人ら「空も泣いてる」 広島・原爆ドーム前で抗議

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、核兵器使用の懸念が高まる中、広島市では1日、約20人の地元在住のウクライナ人らが雨の中原爆ドーム前に集まり抗議した。親子らが青と黄色の国旗を手に「PRAY FOR UKRAINE(ウクライナに祈りを)」とのメッセージカードを掲げるなどし、「戦争反対! 核兵器やめろ」と声を上げた。
「空も泣いてるよ。でも、今声を上げないと大変なことになるし、すでに若者が死んでいってる」。そう言って目元を拭ったのは、ウクライナ西部テルノピリ出身の音楽講師、ナターリヤ・ホンチャリックさん(47)。いとこの女性が、激しい戦闘が続く第2の都市ハリコフに住む軍人で、自宅から移動できない状況だという。丸1日近く連絡が取れていないが、直近の電話では背後で銃声が聞こえたといい、「一人一人の命は本当に大切。軍人も人間よ。プーチンの暴走を許していいのか。ウクライナは、全世界のために戦っているんです」と訴えた。
長男(6)と、ベビーカーに乗せた長女(1)を連れて参加したオールガ・ペレペリーツァさん(36)は、集まった人たちとウクライナ国歌を歌いながら涙を流した。西部ジトーミルに姉と両親がおり、短いメールのやりとりで「ああ、生きてる」と確認している。街では多くの戦闘機とみられるエンジン音や、サイレンが鳴り響き、姉らはその度に地下室に逃げ込んでいるという。「姉は気持ちをコントロールできないのか、自分で髪を切ってしまった。平和が欲しい。どっちの国が正しいかなんて、もういい。平和がいいよ、それだけ」と悲痛な表情で話した。
ロシア軍を支援するベラルーシの出身者も参加した。ナジェヤ・ムツキフさん(40)は7歳の息子と駆け付け、「ベラルーシ人の誰も、ウクライナとの戦争を望んでいない。親戚や友だちが多くいる」と自国の動向を憂えた。ベラルーシでは、自国領を「非核地帯」「中立国」としていた憲法の条項を削除する改憲が承認され、国内にロシアの核兵器が配備される恐れも指摘されている。「チェルノブイリ原発事故を体験し、核の恐ろしさは知っている。安全な所から声を上げることしかできないけれど、広島の原爆ドーム前で訴えることは強いメッセージになる」と話し、「戦争に反対」と息子と声を合わせていた。【小山美砂】