パン製造販売大手のリョーユーパン(福岡県大野城市)の元社長が、会長にパワハラなどを受けたうえに正当な退職慰労金をもらえなかったとして、2145万円を求めた訴訟の判決が1日、福岡地裁であり、松葉佐隆之裁判長は同社と会長に計1045万円の支払いを命じた。判決は、会長が経営会議などで元社長を「無能」とののしり「呪い殺す」などと発言したことをパワハラと認定した。
判決によると、同社は2018年に始めた四国への商品供給で物流費がかさみ業績が悪化。元社長は18年11月~19年1月の経営会議などで、会長から「本当無能な人間やな」「呪い殺してやる」などと言われ、19年2月にうつ病と診断されて翌月に退任した。通常は社長に支払われる退職慰労金は支給されず、元社長は20年8月に提訴した。
これに対し、会長側は、罵声や叱責は「元社長の奮起を促す目的だった」などと主張。退職慰労金は、会社の業績を最悪にした責任が元社長にあり、不支給となる理由があるとした。
松葉佐裁判長は、会長の一連の発言を「社会通念上許容される範囲を逸脱し、違法」と認定。「(元社長は)繰り返し他の役員の前で人格を否定され、精神的苦痛を受けた」と述べた。ただ、うつ病の原因はパワハラだけではないとして、慰謝料は元社長が求めた600万円のうち100万円が相当と判断。退職慰労金や弁護士費用と合わせて計1045万円を同社と会長に支払うよう命じた。
判決に対し、リョーユーパンは「判決を確認できておらずコメントできない」としている。
同社は、ホームページによると、九州を中心に西日本に支店や工場があり、従業員3451人でグループ連結の売上高は423億円(21年3月)。【平塚雄太】