「日本は難民受け入れを」署名活動の在日ウクライナ人ら訴え

ロシアの軍事侵攻が続くウクライナから逃れた難民を日本で受け入れるよう求める署名活動の関係者らが3日、東京都内で記者会見した。発起人を務める在日ウクライナ人のオレクシイさんらが、ウクライナ国内の惨状を訴え、日本政府の積極的な対応を求めた。【和田浩明/デジタル報道センター】
難民100万人超「人道的大惨事」
「殺されたくない、殺したくもない、平和を求めている人たちを受け入れることは社会の向上につながると思います」。オレクシイさんは震える声でそう訴えた。
日本で大学院を修了し働いているオレクシイさんは、「家族の身の安全」を理由に姓を公表していない。ウクライナの状況について「2000人以上の民間人の命がミサイルやクラスター爆弾などで失われ、難民は90万人以上。これは人道的な大惨事だと思います」と強調した。
ウクライナに残っている母親とは連日、連絡をとっているが、背後で爆音が聞こえることもあるという。だが厳しい状況の中でも母親はユーモアを忘れず、日本ではロシア料理として知られるボルシチなどについて「ウクライナ料理だと伝えて」と冗談交じりに話したという。オレクシイさんは、母親から託された「ロシアのプロパガンダ(宣伝)を信じないでください。ウクライナは建国以来、他国を侵略したことはありません」とのメッセージを読み上げた。
ウクライナ当局によると、ウクライナでは2000人以上の民間人が犠牲になった。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ウクライナからの難民は100万人を超えた。今後は400万人に達する懸念もあるとして、国連は国際的な財政支援を呼びかけている。
既存制度の拡充で受け入れを
署名は「ウクライナからの難民のために、日本が取れる七つの拡充アクション」。在日ウクライナ人の家族の呼び寄せ▽別の国に逃れた難民を対象にした「第三国定住事業」を通じた受け入れの拡充▽難民認定の迅速化や人道上の配慮としての在留許可付与▽留学生としての受け入れ――など、既存制度を拡充することによる受け入れを政府に求めている。
発起人は、オレクシイさん▽難民を支援するNPO「WELgee」代表の渡部カンコロンゴ清花さん▽難民・移民などの経済的自立に向け協働する一般社団法人「Robo Co-op」代表の金辰泰さんの3人。賛同人には作家の温又柔(おん・ゆうじゅう)さん、楽天グループの三木谷浩史会長ら40人弱が名を連ねる。目標は10万筆で、すでに4万筆超が集まっており、岸田文雄首相に手渡す考えだ。
この日、オレクシイさんらとともに記者会見した温さんは「難民は普通の人たちで、望んでそうした状況に陥ったわけではない。彼らが当たり前に安全な暮らしを求めていいんだと思えるよう、普通の人である私もささやかな力になりたいと思っています」と話した。
岸田首相は2日、ウクライナ難民の受け入れ方針を表明した。渡部さんは「政府が難民受け入れ方針を出したといっても、受け入れの規模やスピードはどうなるのか。生活や医療、就労など実務面の課題の解消もこれからだ。そうした問題への対処をしてきた方々と連携しながら、日本社会全体で多様な難民の受け入れを加速させたい」と話した。
日本は難民受け入れ数が米欧に比べ非常に少なく、専門家らから「難民鎖国」などと呼ばれる現状もある。金さんは「今回のウクライナ危機を契機に、日本での難民受け入れ拡大の迅速化や、産業界による受け入れ拡充を期待したい」と述べた。
署名はchange.orgで受け付けている。