生活の緊急事態につけ込む「レスキュー商法」…検索ワード連動広告を悪用する業者も

トイレの修理や鍵の解錠を巡り、出張訪問を受けた業者から法外な代金を請求されるトラブルが増えている。暮らしの緊急事態につけ込んだ「レスキュー商法」と呼ばれる手口で、国民生活センターによると、2020年度の相談件数は前年度比1・6倍。ネット広告の表示の仕組みを使って自社サイトに誘導し、法外な代金を請求する業者も確認されており、専門家が注意を呼びかけている。(中瀬有紀)
慌てて検索

大阪市城東区の男性(28)は昨年1月、一人で暮らす自宅マンションの玄関ドアを開けようとした際、鍵がないことに気づいた。慌ててスマートフォンで「鍵 紛失」と入力し、ネット検索した。
<早い!安い!>の宣伝文句で、最上位に表示された業者に電話すると「代金は8000円。火災保険で返金もされる」と言われた。現れた男から「この鍵は特殊」と10万円を請求され、クレジットカード払いで解錠してもらった。
翌日以降、保険会社に問い合わせて補償がないことがわかり、業者に「高額過ぎる」とクーリングオフ制度による契約解除を求めたが拒否された。市消費者センターに相談し、カード代金の引き落としを止めたところ、ドアの鍵穴を何者かに壊されたという。
大阪府警は被害届を受けて捜査。昨年11月、鍵穴に接着剤を詰めたとして鍵修理会社(大阪市)経営の男(26)(起訴)を器物損壊容疑で逮捕した。府警は法外な代金を請求し、その支払いに応じなかった嫌がらせだったとみている。
男は、鍵を修理した別の6人に虚偽の会社所在地を記した契約書を渡し、クーリングオフを利用させないようにした特定商取引法違反でも起訴された。
昔はマグネット

こうしたレスキュー商法に関する被害は広がっている。国民生活センターによると、相談件数は16年度が2437件だったが、徐々に増え、20年度は最多の5885件だった。
水回り修理の相談が59%、鍵の交換は15%で、害虫の駆除などもあった。担当者は「コロナ禍で在宅者が増えた影響もある」とみる。21年度も2月末時点で5843件で、20年度を上回るペースで増えている。
従来は冷蔵庫に張るマグネット広告を巡る相談が多かったが、最近はネットの割合が半分近くに上る。16年度は19%だったが、21年度は46%を占めている。
「上位表示で信頼」

中には、検索ワードに連動して表示される「リスティング広告」が利用されたケースもある。

検索サイトでは、ユーザーが入力したキーワードに応じて広告主のサイトアドレスが自動表示される。表示の順番は原則、検索サイト側に支払う広告料などに応じて決められており、上位に並ぶ。
この仕組みに目を付けた悪質業者が効率的に客を獲得しようと利用する例も目立つ。鍵の交換で被害に遭った城東区の男性も「広告料を支払って表示された業者とは思わず、上位にあるから信頼できると思ってクリックした」と振り返る。
昨年10月に兵庫県警がトイレの修理代名目で20万円を詐取したとして逮捕した男(29)(詐欺罪で起訴)が経営する水道工事会社(神戸市)は、リスティング広告費として月2000万円を支出。同社は1年間に約7900件の契約を結び、6億円以上を売り上げていたという。
業者相手に損害賠償請求訴訟を起こしている弁護士らが大手検索サイトにリスティング広告の厳格な審査を申し入れる動きもある。
ある大手検索サイトの担当者は「システムによる自動評価と人による評価を組み合わせ、規約に基づき審査している」とする。
ネット上での消費者被害に詳しい京都大の

依田
(いだ)高典教授(行動経済学)は「国は国民生活センターに寄せられた相談情報を検索サイト側と共有し、悪質業者を排除できるよう連携すべきだ」としている。