旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして、東京都の北三郎さん(78)=活動名=が国に3000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(平田豊裁判長)は11日、国に1500万円の賠償を命じた。1審・東京地裁判決(2020年6月)は請求を棄却しており、北さん側の逆転勝訴となった。全国9地裁・支部に起こされた同種訴訟で高裁判決は2件目で、国に初めて賠償を命じた2月の大阪高裁に続く勝訴。被害者救済の流れが強まりそうだ。
判決は、旧優生保護法の規定は幸福追求権を保障する憲法13条と、法の下の平等を定めた14条に反すると指摘。不法行為から20年で損害賠償を請求する権利が自動的に消滅する「除斥期間」が適用されるかどうかが主な争点だったが、「適用すれば著しく正義・公平に反する」として制限すべきだと判断した。
北さんは57年に旧法に基づく手術を受けさせられた。1審は、旧法が違憲かどうかの判断は示さなかったものの、北さんへの手術は、憲法13条が保障する子を産み育てるかどうかの意思決定権を侵害したと指摘。ただし、除斥期間が経過したとして請求権は消滅したと判断した。
大阪訴訟の原告も、手術から提訴するまでに20年以上経過していたが、大阪高裁は「旧法は人権侵害が強度で、国は旧法に基づく施策で障害者らに対する差別・偏見を正当化、固定化した。除斥期間の適用をそのまま認めることは著しく正義・公平の理念に反する」と判断。除斥期間の適用を制限し、原告3人に対する計2750万円の賠償を国に命じた。【遠山和宏】
他の訴訟に波及「法的安定性を欠く」
今後の対応について、厚生労働省は「判決内容を精査し、関係省庁と協議した上で、適切に対応したい」とのコメントを発表した。法務省などと今後協議に入るが、一連の訴訟で国の賠償責任を初めて認めた2月22日の大阪高裁判決について国は上告しており、政府・与党内では「同様の対応になるのでは」との見方も出ている。
B型肝炎などの被害者が救済を求める訴訟では、賠償請求の権利が20年で消滅する「除斥期間」が適用されていることもあり、政府内には「このまま確定すれば他の訴訟に波及して、法的安定性を欠くことになりかねない」との声もある。【小鍜冶孝志】
旧優生保護法を巡る各裁判所の判断
裁判所 判決 憲法判断 除斥期間
仙台地裁(2019年5月) 棄却 違憲 ※適用
東京地裁 (20年6月) 棄却 判断せず 適用
大阪地裁 (20年11月)棄却 違憲 適用
札幌地裁 (21年1月) 棄却 違憲 適用
札幌地裁 (21年2月) 棄却 手術の実施を認めず
神戸地裁 (21年8月) 棄却 違憲 適用
大阪高裁 (22年2月)賠償命令 違憲 適用せず
東京高裁 (22年3月)賠償命令 違憲 適用せず
※除斥期間を棄却の主たる理由とはせず