改正健康増進法の一部施行に伴い佐賀県庁で撤去された喫煙所を、再び設置しようとする動きが起きている。全県議37人が「紹介議員」となり、喫煙所の再設置を求めて県議会に提出されていた請願が、18日の本会議で全会一致で採択された。これに対し、「時代に逆行している」と疑問視する声も上がる。(丸山滉一)
「全面禁煙はあまりに乱暴。全議員が印鑑を押した請願を重く受け止めてほしい」。9日の県議会総務常任委員会で、自民党の西久保弘克議員が語気を強めた。これに対し、元村直実・総務部長は「(敷地内の)全面禁煙は県のたばこ対策の一つで、重点的に取り組む。(禁煙に対する)県の姿勢を明確にする必要がある」と答弁し、再設置には否定的な考えを示した。
請願は、県たばこ販売協同組合など3組合が提出した。喫煙所が撤去されて以降、来庁者や職員が周辺の路上やコンビニ前での喫煙を余儀なくされ、「望まない受動喫煙を誘発した」としている。
請願を提出するには、内容に賛同する紹介議員が必要で、今回は37人の県議全員が賛同した。自身はたばこを吸わないという公明党の木村雄一議員も「受動喫煙を防ぐには分煙環境を整えるべきだ」と語る。
実際、県には庁舎周辺で喫煙する職員らについて、「見苦しい」「通りかかるとにおいが気になる」などの苦情が寄せられるようになった。
請願が採択されても強制力はないが、今後は県側が対応を協議することになる。佐賀市の女性(21)は「もし再設置されたら、県が『たばこを吸ってもよい』というお墨付きを与えることになるのではないか」と批判。内科医で日本禁煙科学会の高橋裕子理事長は「行政が喫煙環境を整えることになり、県民の健康を守るという考えから逆行する。(佐賀県議は)喫煙に対する知識が足りないと感じる」と話す。
一方、神奈川県受動喫煙防止条例の立案に携わった東海大の玉巻弘光・名誉教授(行政法)は「再設置は路上喫煙を防げる利点がある。批判されることではなく、あっていい判断だ」と指摘している。
九州・山口各県と県庁所在市で庁舎敷地内を完全禁煙としているのは、佐賀県のほか長崎市と熊本市のみ。熊本市では一時、近くのコンビニ前に職員らが集まることがあったが、市の注意で改善された。長崎市でも近くの喫煙スペースで吸う人が多く、年に数回ほど苦情が寄せられるという。
撤去された喫煙所を再設置したケースは他県でもある。熊本県運転免許センターは2019年7月に撤去したが、駐車場などで喫煙する来庁者が増えたため、再び設置した。奈良県香芝市では昨年12月、市議会が市役所敷地内への喫煙所再設置を求める決議案を可決。路上喫煙が増えたことを理由としており、市が対応を検討中だ。
◆改正健康増進法=受動喫煙防止を目的に2018年7月に成立。19年7月の一部施行で行政機関の庁舎や学校、病院などの「第一種施設」が原則禁煙となった。施設利用者が立ち入らない場所に設置するなど、必要な措置がとられていれば「特定屋外喫煙場所」を設けることができる。ただ、厚生労働省は自治体に「設置を推奨するものではない」とする通知を出している。