民事介入暴力などの暴力団の不当行為を取り締まる暴力団対策法が施行されて今年3月で30年。暴力団のシノギ(資金獲得活動)の代表格である「みかじめ料」の被害に苦しんできた東京都内の飲食店経営者らが、暴対法に基づきトップの代表者責任を問う損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。同様の手法は特殊詐欺事件で確立しているが、みかじめ料の取り立てで適用するのは都内で初めて。弁護団は「表面化しにくい、みかじめ料被害の抑止効果になる」と強調する。
オープン初日に…
「付き合え」
平成11年ごろ、都内のある繁華街でクラブをオープンした男性は、開店初日に店の前で、目つきの悪い男から突然、声をかけられた。男は指定暴力団住吉会傘下組織の構成員。一言だったが、すぐにみかじめ料の要求とわかった。恐怖心から「わかりました」と応じ、そこから20年以上にわたり、毎月1万~5万円を支払い続けた。
別の男性は令和元年12月初旬、同じ繁華街でオープンさせた店に、構成員の男がやってきた。路上に連れ出され「みんな払ってるから。わかるでしょ。払ってもらえるよね」と、月2万~5万円のみかじめ料を求められた。毅然と拒むと男は立ち去ったが、その後、同業者に「被害被るよ」と「忠告」されたという。
それでも無視していると「嫌がらせ」が始まった。暴力団関係者とみられる男らが店を度々訪れ、女性従業員らを取り囲み騒ぎ立てる。従業員が複数の男に取り囲まれる。店の目の前の居酒屋から一日中、監視されたこともあった。
客足は激減し、怖がった女性従業員は全員が退職。開店から1カ月余りの翌年1月上旬、店を閉めざるを得なくなった。前払い分を含めた店の賃料などの諸経費が重くのしかかった。
恐怖で声上げられず
こうした苦しみに耐えかねた飲食店・性風俗店の経営者や元経営者5人が昨年12月、住吉会トップの関功前会長らを相手取り、計約5千万円の損害賠償を求める訴えを起こした。訴状によると平成11年ごろから令和2年にかけて、毎月3万~5万円のみかじめ料の要求などで1人当たり206万~1432万円の被害を受けたと主張している。
平成20年施行の改正暴対法で、指定暴力団員が威力を利用し他人の身体や財産を侵害した場合、代表者が賠償責任を負うと定められた。このため近年では、組員が関与した特殊詐欺事件の被害者がトップに責任があると訴え、勝訴するケースが相次いでいる。
「地代」「用心棒代」と称して縄張り内の飲食店から金銭を要求する「みかじめ」は、威力を利用する典型だが、今回のような訴訟は名古屋などで例があるものの都内では初めて。理由について原告弁護団の岡本健志弁護士は「被害者が直に接する特殊詐欺の『受け子』は暴力団員ではないことが多いが、みかじめ料は暴力団員が直接、要求する。顔を知られている恐怖感から裁判に踏み切れない場合が多いのではないか」と明かす。
令和元年に改正された都暴力団排除条例では、みかじめ料を支払った飲食店などの経営者に刑事罰が科されることになっているが、繁華街の多い都内では、関係を断てずにいる事業者は数多くいるとみられる。
岡本弁護士は「今回の訴訟の原告も恐怖心を訴えていたが、勝訴することで、救済の流れを波及させたい」としている。(塔野岡剛)