SMBC日興証券(東京)を巡る相場操縦事件で、特定銘柄の株価を不正に維持した金融商品取引法違反で起訴された同社の担当幹部が、証券取引等監視委員会から照会を受けた後に行われた社内調査で「監視委に気をつけよう」などと発言していたことがわかった。不正取引はその後、副社長の逮捕容疑となった銘柄でも行われており、東京地検特捜部は、内部管理体制の不備で問題が放置され、組織ぐるみの不正につながったとみている。
関係者によると、同社が株を投資家に転売する「ブロックオファー取引」を巡り、監視委から取引の不審点について照会を受けたのは2020年10月。社内では、株の売買を取り扱う「エクイティ本部」の元部長山田誠被告(44)(金商法違反で起訴)に対するヒアリングが行われたが、山田被告は「この取引は株価の『買い支え』になる」と述べたほか、監視委への対応策などについて、「気をつけよう」と話したという。
同本部内でも買い支えの手法について、相場操縦罪を問われる可能性を危惧する声が出ていた。株主の営業担当部長だった岡崎真一郎被告(56)(同)が山田被告に対し、「株価への関与は大丈夫なんですか」などと確認したこともあったという。
しかし、監視委の照会後も不正な取引が続けられ、副社長の佐藤俊弘容疑者(59)も昨年4月に山田被告らと共謀し、製薬会社株の株価を不正に維持した疑いで逮捕された。
特捜部は山田被告のヒアリングでの発言や社内電話の音声データなどを押収。ある検察幹部は、「SMBC日興では、不正取引の是正に対処した形跡がない。組織として機能していない証拠だ」と批判している。
SMBC日興の近藤雄一郎社長は24日の記者会見で、「社内の売買体制や内部管理体制に不備があったことは否定できない」と述べていた。