3.11で流された写真、最後の返却会 47万枚が家族の元に 宮城

東日本大震災の津波で流された写真の返却会が27日、宮城県山元町の地域交流センター「ふるさとおもだか館」で開かれた。同町の返却会はこの日で最後となる。訪れた人は「また1枚見つかった」などと話しながら、思い出が詰まった写真に見入っていた。
主催は、ボランティア団体「思い出サルベージ」。震災後、自衛隊や消防団が回収した写真約80万枚を町民に残そうと、洗浄してからカメラで再撮影して保管した。2011年6月から返却を始め、町内の施設で19年まで常設展示するなどして、約47万枚を返却した。今回は、30万枚以上を見つかった場所ごとにファイルに整理して展示した。小中学校の卒業アルバムや卒業証書も並べた。
角田市から初めて訪れた幼稚園教諭の森玲奈さん(20)は、叔母の結婚式の写真を見つけた。津波で亡くなった祖父の門間道(とおる)さんの姿も写っていたといい、「働き者で優しいおじいちゃんだった。家が津波で流され、ほとんど写真が残っていないので、うれしい」と懐かしんだ。
町内に住む吉野明子さん(76)は、津波で自宅を流され、子どもたちの思い出の写真を探しに何度も訪れているという。「寂しい気持ちもあるが、大変なことを11年もやってくれて心から感謝している」と語った。
思い出サルベージ代表で、関西大学准教授の溝口佑爾(ゆうじ)さん(38)は今後について「誰もが納得できる形での活用法を考えたい」と話した。【平家勇大】