東日本大震災で打撃を受けた東北の小さなまちに活気があふれた――。ラグビー・ワールドカップ(W杯)の試合があった岩手県釜石市に25日、国内外から多くのファンが集まった。スタジアムでは釜石伝統の大漁旗がはためき、震災からの復興を世界にアピールした。
釜石市は、拠点とする新日鉄釜石(現釜石シーウェイブス)が日本選手権7連覇を達成した「ラグビーのまち」として知られる。震災では津波で甚大な被害を受け、1000人以上が犠牲になった。人口は3万人ほど。普段は外国人の姿も少ないが、この日は海外から多くの観戦客が訪れた。
会場の釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムは開門前から長い行列ができ、ほぼ満員の約1万4000人で埋まった。その中に、招待された市内の小中学生約2000人もいた。子どもたちは試合開始前、「Thank you for your support during the 3.11 Earthquake and Tsunami」(東日本大震災での支援をありがとう)と書かれた旗(縦10メートル、横15メートル)をグラウンドに広げた。同時に、復興支援への感謝を伝える歌を合唱すると、スタンドは大きな拍手で沸いた。
旗を広げた中学3年の伊藤雄基さん(14)は「緊張で足が震えたが、拍手をもらって気持ちが伝わったと思った」とはにかんだ。
その後、試合をするフィジーとウルグアイの選手が入場。20秒にわたって目を閉じ、震災の犠牲者に黙とうをささげた。大熱戦となった試合は、ウルグアイが30―27でフィジーを降した。
ニュージーランドで3月、51人が死亡した銃乱射事件で教え子2人を失った現地の日本語教師、久世たかおさん(51)も観戦に訪れた。「大切な人をなくす悲劇から復興に歩む釜石の姿は、世界の人々に勇気と希望を与える」と話した。釜石市平田で被災した会社員の佐藤寿也さん(40)と佳奈さん(42)夫妻は、我が子2人が合唱した。「試合展開もスリリングで言うことなし。世界の人たちに復興を発信できた」と喜んだ。
釜石市で行われるのは計2試合。次回は10月13日、ナミビア―カナダ戦がある。【日向米華、中尾卓英】