コロナ禍の陰で、日本に今、“超高齢化”という新たなクライシスが迫っている。2025年には、約800万人いる団塊の世代が75歳の後期高齢者となり、歴史上前例のない高齢化社会が訪れようとしている。果たしてそこに希望はあるのか? その現実に向き合った。
◆高齢者への過剰な忖度が未来を壊す
高齢者の割合が増えることで、その意向が優先されるシルバー民主主義。若者の政治離れや経済成長の妨げとなるリスクがあり、超高齢化社会においては憂慮すべき課題であるが、選挙プランナーの三浦博史氏によれば「高齢者向けの政策が多いのは、必ずしも票集めが目的ではない」のだという。
「高齢者向けの政策が多いのは、この数十年変わっていません。なぜなら、政治の役割は、緊急度に応じて優先順位をつけることだからです。災害時に人命救助を優先するのが最たる例。同様に、若者に比べて健康面や収入面で不安を抱える高齢者ほど、優先すべき喫緊の課題が増えていきます」
◆声の大きさだけが政治のすべてではない
とはいえ、投票率でも高齢者の声は大きく感じるが、必ずしも声の大きさだけが政治のすべてではないと三浦氏。
「現在、農業や水産業などの第一次産業の従事者が減っていますが、『票にならない』とその声を軽視すれば、国の根幹が揺らぐ。あくまで重視するのは優先度です」
◆「高齢者はエゴイスト」という誤った認識
だが、高齢者は「救済すべき弱者」との前提に立つ限り、その利益が優先される事実は変わらない。では、当の高齢者は現状をどう思っているのか。男性60代以上1000人に実施したアンケートでは、44.4%が「未来のために動く政治家に投票する」と回答。
また別の問いで「医療費や介護費の負担増、相続や金融資産への増税など、高齢者やその保有資産への負担増には反対ですか?」には、約半数が「未来に繋がる政策なら高齢者の負担増にも賛成」と回答し、未来を優先すべきとの声が半数を占めた。
◆実は高齢者も客観的に現実を理解
経済学者の八代尚宏氏は、この結果を歓迎する。
「破綻を防ぐには、国債依存の年金、医療、福祉など社会保障制度の改革は必須。ただ、最大のネックが票田でもある高齢者の反発です。しかし、実は高齢者も客観的に現実を理解しており、痛みを分かち合う政策を支持する層が半数もいる。これは、社会にとって大きな発見だと思います」
◆政治家が過剰に忖度
しかし、こうした高齢者の実像を政治家が理解していない点が、今後の課題だと八代氏は続ける。
「シルバー民主主義が進む要因のひとつは、『高齢者は自分の利益しか考えないエゴイスト』だと政治家たちが錯覚して、過剰に忖度してしまうこと。
実際は、正月に孫へお年玉をあげるのを楽しみにしている高齢者が、逆に孫のお年玉や子どもの未来を横取りしたいと思うはずがないのです」
◆シルバー民主主義からの脱却
では、シルバー民主主義から脱却するには、何が必要か?
「被選挙権を20歳まで引き下げ、オンライン投票で若い世代の声が反映されやすくすること。また、高齢者を含む全世代が借金漬けの社会保障制度の現状を正しく認識し、協力して“忖度”する政治を退けることで、持続可能な未来が生まれるはずです」(八代氏)
「どうせ老人が牛耳る国」と失望するなかれ。高齢者は敵ではなく、未来を憂う多くの先輩であるならば、一縷の望みはある。
【選挙プランナー 三浦博史氏】
国会議員公設秘書などを歴任後、日本初の選挙プランニング会社・アスクを設立。選挙予想の的中率でも有名。著書に『地方選挙実践マニュアル』(第一法規)など
【経済学者 八代尚宏氏】
昭和女子大学副学長。内閣府規制改革推進会議委員などを歴任。著書に『シルバー民主主義 高齢者優遇をどう克服するか』(中公新書)など
<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/髙橋慶佑 モデル/関口 衡(古賀プロダクション) アンケート/QiQUMOを利用して調査>
―[[超高齢化]の危機]―