ウクライナからの避難民20人が5日、政府専用機で日本に到着した。これまで400人を超える避難民が日本にいる親族などを頼りに来日したが、今回は身寄りのない人も少なくない。入国後の仕事探しや日本語の教育など課題は多く、受け入れる行政側も手探りが続く。
公営住宅や一時金 臨時採用も検討
5日午後2時半すぎ。政府専用機で羽田空港に到着した避難民は緊張した面持ちで入国審査に向かった。20人のうち15人は女性で、大きなリュックを背負った小さな子どもの姿もあった。新型コロナウイルスの陰性確認後、日本に知人がいる人は公共交通機関などで受け入れ先に向かったが、身寄りのない人は一時滞在先となるホテルに移動し、受け入れる自治体が決まるまで待機する予定だ。
今回の避難民について、東京都や神奈川県など複数の自治体が受け入れを表明している。
既に避難民7組12人を受け入れている都はニーズの把握に力を入れる。電話相談窓口に寄せられた371件の相談では、住居の確保に関する内容が最多だった。都営住宅100戸を既に確保しており、状況に応じ最大700戸まで拡大する方針という。
また、避難民には10歳未満の就学児も含まれ、就学や言語支援の必要性も高まっている。都は支援拡充を検討しているが、担当者は「都や区市町村だけでは限界もある。支援に差が出ないように、国がきちんとスキームを示してほしい」と話す。
東京都狛江市では、市内に避難したウクライナ人を支援しようと、1人当たり10万円の一時金を給付することを表明。就労が必要な場合には、市の臨時職員としての採用も検討する。ウクライナ語に対応した翻訳機の貸与や、医療や子育てに関する費用の援助も視野に入れる。
市内では既に家族を頼って来日した70代のウクライナ人の女性が暮らしており、「避難者の孤立を防ぐのが次の課題」と担当者は強調する。今後、生活に慣れるよう市民の交流の場もつくる考えだ。
避難民にとって最も必要な支援は何なのか。
埼玉県越谷市で日本人の夫と暮らすウクライナ出身の深谷アナスタシアさん(24)は「住居の確保と医療、就労先を探すためのサポートは欠かせない」と訴える。アナスタシアさんの50代の母は今月、ウクライナ南部からポーランド経由で日本に身を寄せる予定で、受け入れに不安がよぎる。
最も懸念するのは「言葉の壁」だ。銀行口座の開設や役所での書類手続きも、言葉が話せなければ何もできない。一方、日本の国民健康保険は在留期間が3カ月を超えなければ申請できず、病気やけがをすれば高額の医療費が求められる可能性もあり、医療面での支援の必要性も強調した。【国本愛、加藤昌平、加藤佑輔、斎川瞳】
セガにドンキ 産業界でも支援広がる
産業界でも避難民を受け入れる動きが広がっている。
ゲーム大手セガサミーホールディングス(東京)は傘下の大型リゾート施設「フェニックス・シーガイア・リゾート」(宮崎市)の宿泊施設約10室を確保する。キッチン付きで1室5人程度が滞在でき、今後の状況次第で受け入れ人数の拡大も検討する。タオルやバスローブをたたむなどの就業機会も提供する考えで、広報担当者は「紛争で苦しんでいる人々と共にありたい」と話す。
ディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京)も避難民100世帯を受け入れる。関係省庁や自治体と協力し、実際に受け入れた際には住居や生活物資を提供するという。グループ会社内で働く機会を提供することも想定しており、同社は「必要な支援については政府関係者と協議して決めていきたい」とした。
運送大手のセイノーホールディングス(岐阜県大垣市)が全国で300戸弱にのぼる社宅の空き部屋を活用し受け入れ準備を進めているほか、賃貸アパート大手のレオパレス21(東京)も自社が管理する住宅を避難民に順次提供する方針だ。【道下寛子、中島昭浩】
全国知事会、連絡調整本部を設置
全国知事会は5日、ウクライナ避難民受け入れに関する連絡調整本部を設置した。住居確保や生活支援、会話のサポートなど課題を各都道府県で共有し、国とも連携しながら避難民の受け入れ態勢を整える。本部長を務める知事会長の平井伸治・鳥取県知事は同日夜に記者会見し「地方団体が世界の難局の中で一定の役割を果たすことも必要だ。今後は縁故のない方々の避難も予想される。できることから準備を整えていく」と述べた。【黒川晋史】