ロシアの侵攻を受けるウクライナの避難民20人を乗せた日本の政府専用機が5日、ポーランドから羽田空港に到着した。
昨年8月のカブール陥落では、日本は自衛隊輸送機3機を飛ばしながら、アフガニスタンから帰国を希望していた邦人1人と、米国から要請を受けたアフガン人14人の計15人しか輸送できなかった。国外退避を希望していたアフガン人の協力者500人以上が置き去りになった。
その汚名をそそぐべく、今回は林芳正外相のポーランド出張に合わせて飛んだ政府専用機を柔軟に運用し、人道的な措置をとったかに見えた。ところが…。フタを開けてみると、またもやあきれた事実が浮かび上がった。
政府専用機は予備機と合わせて常に2機飛んでいる。防衛省によると、搭乗可能な人数は1機につき最大110人。今回避難民を乗せた予備機のみならず林外相が利用したもう1機も活用すれば、さらに搭乗可能な人数は増える。
にもかかわらず、搭乗を希望しながら「不可」とされたウクライナ人や日本人がいたという報道があったのだ。
テレビ朝日によると、40代の日本人女性は、ウクライナ人の夫と娘2人を持ち、ウクライナの首都キーウ(キエフ)から西部リビウに避難してした。女性が日本大使館に、政府専用機への搭乗について問い合わせたところ、「日本国籍を持っている人(=女性と娘2人)は対象でない」と言われたという。
これは、二重の意味で理解に苦しむ判断だ。
1つは、そもそも日本の政府専用機なのだから、邦人の輸送こそ優先させるべきだということ。仮に、自ら航空券を購入した日本人との公平性を考慮したのだとしたら、後日代金を支払ってもらうという柔軟な対応も考えられたのではないか。いうまでもなく、公平性より重要なのは戦火からの脱出を希望する国民を1人でも多く助けることであるはずだ。
もう1つは、「ウクライナ人用」と言いながら、ウクライナ人を夫と父に持つ家族を受け入れなかった、つまりウクライナ人家族を拒否したこと。あまりのお役所仕事ぶりに、アフガンの汚名をそそぐどころか、恥を上塗りしてしまった感が否めない。
《夕刊フジが「どんな基準で搭乗者を選んだのか」と問い合わせたところ、外務省担当者は「あくまで現地での聞き取りで人道的な観点から手を差し伸べた。希望者全員が搭乗できたかは、回答を差し控える」と回答した》
退避を希望する自他国民を見捨て、ガラ空きの機体で航空機を帰国させたと言われても仕方ないのではないか。政府には猛省を促したい。
■葛城奈海(かつらぎ・なみ) 防人と歩む会会長、皇統を守る国民連合の会会長、ジャーナリスト、俳優。1970年、東京都生まれ。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会幹事長。著書・共著に『国防女子が行く』(ビジネス社)、『大東亜戦争 失われた真実』(ハート出版)、『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社)。