主流は「二刀流」・経験不足も…昨年衆院選でミス296件、選管「人材難」深刻

選挙事務に関するミスや問題行為の増加が問題となる中、選挙管理委員会事務局の人材難が課題となっている。読売新聞が47都道府県選管を調査したところ、9府県では選管業務を専門で行う専従職員がいないことが判明。専従職員がいる選管でも短期間での異動などが常態化している。選挙事務は法令知識など高い専門性が求められるだけに、専門家は「全国で選挙に詳しい職員が不足しており、対策が急務」と指摘する。(清永慶宏、南暁子)
総務省によると、昨年10月の衆院選で投開票事務のミスなどは計296件。国政選挙で過去最多に上り、選管職員の経験不足や応援に入る職員への研修不足などが指摘されている。
都道府県選管は直接、投開票の作業は行わないが、国政選などの事務を管理するほか、法令解釈などについて市区町村選管に助言や勧告をする立場にある。
読売新聞が47都道府県選管の体制を2~3月に調査したところ、専従の職員がいるのは38都道府県。富山、静岡、愛知、三重、滋賀、京都、奈良、長崎、宮崎の9府県は専従職員がおらず、他部署と兼務していた。
都道府県選管では、他部署との併任・兼務の「二刀流」が多く、国政選時に一時的に応援を受ける体制が主流だ。専従職員がいない京都府は、従前から自治振興課がマイナンバー制度などの業務と並行し、選管事務を担当。4月10日の知事選では、13人に増員して対応したが、府幹部は「今年は参院選もあり、仕事の両立が大変になる」とする。
一方、北海道では投開票ミスの増加を受け、2011年度から専従者を配置。担当者は「ミス事例の共有や研修を通じ、市町村との連携を進めている」と話す。
専従者がいる38都道府県では、それぞれ1~25人体制だが、事務局全員が専従なのは東京都(25人)だけ。都では人材が手薄な自治体の選挙時にオブザーバーとして協力することもあるという。

選管が専従の職員で構成できない背景には、行財政改革による職員の減少がある。総務省によると、1994年に173万人いた都道府県職員は、2021年には約2割減の143万人となった。
異動が3年周期という選管も多く、4年に1度の知事選や都道府県議選を経験しても次の選挙時は異動していることも多いため、ノウハウの蓄積につながりにくいのが実情だ。
沖縄県では昨年の衆院選時、専従4人の在籍年数は最長の職員で3年目で、全員が衆院選は未経験だったため、経験者の応援を受けてしのいだ。県内のミスは記録が残る中で過去最多の12件だった。
中国地方の市選管経験者は「法令解釈を県選管に尋ねても、回答が翌日になり困ったことがある」と、県選管の体制に不満を漏らす。

数が限られた職員と経験不足を補おうと、各府県は対策に工夫を凝らす。
秋田県は昨年、退職した選管経験者1人を「専門員」として再任用し、業務の支援を受けていた。神奈川県は、選管で対応した過去約10年分の質問と回答を一覧にしているほか、福岡県では、過去の選挙対応に基づき、やらなければいけないことを「ToDoリスト」にまとめている。
大阪府や青森県は、選管経験が10年以上の職員からノウハウ継承を進めている。また、総務省も自治体に選挙事務の巡回指導を行う「管理執行アドバイザー」を派遣している。
◆選挙管理委員会=地方自治法に基づき、国政選挙や地方選挙に関する事務を管理する。都道府県と市区町村に置かれ、事務局が事務執行を補助する。都道府県選管は市区町村選管への助言、法令や制度に関する問い合わせに対応するほか、政治団体の届け出や政治資金関連の窓口も担う。